木城ゆきとのサイボーグ観|『銃夢』の精神性と、現実の技術への期待

新装版銃夢第1巻の表紙に描かれたガリィ 木城ゆきと
木城ゆきと『新装版銃夢』第1巻「錆びた天使」/講談社、2018年刊。

木城ゆきとさんは、1980年代前半からサイボーグを題材に短編を描いてきました。
その関心は『銃夢』につながり、現実の義手・義足やロボット技術にも向けられています。
本人の言葉には、生活を助ける技術への期待と、人を操る使い方への反対が、どちらもあります。

新装版銃夢第1巻の表紙に描かれたガリィ
木城ゆきと『新装版銃夢』第1巻/講談社、2018年刊。 出典

『銃夢』という名前に、現実と心の両方がある

木城さんは2020年に報告されたパリでの質疑応答で、『銃夢』の題名について話しています。
当初は銃を使う物語を考えていましたが、描くうちに格闘が中心になりました。
それでも木城さんは、「銃」と「夢」の組み合わせが作品に合っていると考えています。

本人の説明では、「銃」は現実の厳しさや暴力を、「夢」は精神性や心の優しさを表します。
機械の身体や激しい戦いが登場する作品に、心というもう一つの題材がある。
木城さんは、その二つの意味を、題名の「銃」と「夢」に重ねて説明しています。

ガリィが主人公になるまでの経緯は、脇役の警官から始まった誕生秘話で紹介しています。

SFの世界には、科学の土台も求める

同じ質疑応答で、木城さんは科学に基づくSFを好んできたことも説明しました。
『銃夢』のザレムも、ただ想像上の浮かぶ島として置くのではなく、科学的なモデルに支えられたものにしたいと話しています。

木城ゆきとが制作したザレムの3DCGモデルから抽出した輪郭線
ザレムのCGモデルから抽出した線/木城ゆきと公式CGギャラリー。 出典

木城さんは、科学の論文をネットで読むとも述べています。
『銃夢』では、空中都市があるという空想にも、科学的な説明を用意しようとしているのです。

義手を増やして、もっと速く漫画を描けたら

木城さんは2015年の本人インタビューで、フィクションの中にあった技術が実用化へ近づくことを楽しみにしていると話しました。
自分もロボットスーツが買える値段になれば欲しい、と応じています。

さらに木城さんが挙げたのは、脳波で動く義手を4本ほど増やし、ものすごい速さで漫画を描けたら、という想像でした。
サイボーグを描く漫画家が、自分の仕事にも身体を拡張する技術を使えたらと夢を広げた発言です。

生活を助ける技術と、人を操る技術

2020年のパリでの質疑応答では、木城さんは、義肢の進歩が障害のある人の生活を助けることを支持しました。
一方、人の脳に働きかけ、本人を操るために技術を使うことには反対を表明しています。

パリでの質疑応答でマイクを持つ木城ゆきと。中央に座って話している
中央:木城ゆきとさん。パリでの質疑応答/2020年2月掲載。 出典

まとめ

木城さんの期待と反対を一緒に読むと、技術の進歩を、その使い方と切り離さずに考えている姿が見えます。
漫画を速く描ける身体への想像や、暮らしを支える義肢への支持には、技術が人の力になることへの期待があります。
人を操る用途への反対も含めて読むと、サイボーグを描く作者の関心は、機械の性能だけで終わらないものだと分かります。

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