木城ゆきとさんが『銃夢』へ3DCGを取り入れたのは、完全版の表紙を制作するためでした。
写真のような質感を目指した後、漫画では輪郭線を取り出す使い方へ変わっていったと、2019年の本人インタビューで振り返っています。
公式サイトには、その試行錯誤を具体的に見られる3Dモデルが残っています。
都市の輪郭、複雑な装置の立体、別に作った光の表現。
同じ3DCGでも、欲しい絵に合わせて出力を変えていました。
中学生の頃から好きだった、3DCGの立体
木城さんは2019年のインタビューで、中学生の頃からワイヤーフレームが好きだったと話しています。
立体を線で表したCGの作品集を買って眺め、コンピューターも3DCGを作りたくて購入しました。
しかし、初めは簡単なものしか作れず、求めていた表現には届かなかったといいます。
1997年頃、ソフトの価格や説明書が整い、本格的に使えるようになりました。
その技術を『銃夢』の豪華本、つまり完全版の表紙へ投入します。
完全版自体の刊行は、作者の作品紹介によると1998〜2000年です。

当時は、できる限り写真のように見える表現を試しました。
木城さんは、その写実性と漫画の相性は悪かったと振り返り、2019年には輪郭線を抽出する使い方を説明しています。
表紙用のザレムを、漫画の下描きへ使う
作者の『銃夢LO』3DCGギャラリーにあるザレムは、完全版の表紙用に作ったモデルです。
木城さんは、立体からいったん絵を出力し、Photoshopで輪郭線を抽出して、下描きに使いやすくしたと説明しています。

都市の建物や、斜めに伸びるケーブルまで線になっています。
これは完成した漫画のコマではなく、漫画を描くために用意した輪郭の例です。
表紙に使う立体を、本文の作画にも利用していました。
同じ装置でも、線と立体を別に確かめる
『Last Order』に登場する装置マーリンは、木城さんがShade上で形を作りながらデザインしたものです。
公式ギャラリーでは、線を主体にしたものと、立体の形を把握するための別テイクが並んでいます。


複雑に重なった部品は、線で見る時と、陰影で見る時で分かりやすい部分が変わります。
同じ角度の二つを比べると、部品の配置は共通でも、面の丸みや奥行きの伝わり方が違うことが分かります。
さらに、発光する部分と透明な部分は別に出力し、仕上げで合成していました。
このマーリンでは、一度の出力ですべてを完成させていません。

カバーに登場する楽器も、立体で作る
3DCGは都市や巨大な装置だけに使われたわけではありません。
旧版『Last Order』13巻のカバーで汰羅刃が使う楽器、バッチューバも、公式ギャラリーに公開されています。
エンジン部分はハーレーをモデルにしたと、木城さんは説明しています。

管とエンジンが組み合わさった楽器も、立体の形として作られていました。
表紙、本文の下描き、仕上げと、3DCGを使う場面は一つに限られません。
紙の原稿とデジタル仕上げの組み合わせは、木城さんが公開した作画工程でも説明しています。
まとめ
木城さんの3DCGを見る時は、出来上がった立体だけでなく、どんな絵にして使うかにも注目すると面白くなります。
同じ装置から線、陰影、光を別々に取り出す方法には、漫画の一枚を仕上げるための具体的な使い分けが見えます。


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