矢作康介さんは、『レベルE』を担当し、『HUNTER×HUNTER』の連載を立ち上げた編集者です。
『NARUTO―ナルト―』の初代担当でもあり、冨樫義博さんと岸本斉史さんの両方と、作品を作っていました。
冨樫さんとの仕事で面白いのは、担当編集者でありながら、次の展開を知らずに原稿を読んでいたという話です。
その進め方と、編集者としての関わり方を、本人の言葉からたどります。

『レベルE』から『HUNTER×HUNTER』の立ち上げへ
矢作さんは1994年に集英社へ入り、『週刊少年ジャンプ』編集部に配属されました。
冨樫さんを担当したのは『レベルE』からで、1998年には『HUNTER×HUNTER』の新連載を担当しています。
本人の「編集長の部屋」でのインタビューによると、冨樫さんの担当を離れたのはハンター試験編の終盤でした。
その仕事には、作品の方向を変える提案もありました。
『レベルE』は当初、さまざまな宇宙人の話を描く予定で、王子の出番も序盤までのはずだったのです。
ところが第1話の反響が大きく、編集部は王子を引き続き登場させてほしいと依頼。
冨樫さんが応じたことで、その後も王子が登場する形になりました。
岸本斉史とは先に相談、冨樫義博とはネームを読んでから
2026年に公開されたMugenのインタビューで、矢作さんは二人との打ち合わせの違いを振り返っています。
岸本さんとは、物語の展開や人物の成長について先に詳しく相談していたため、ネームを読む前から内容が分かっていたそうです。
ネームとは、コマ割りや台詞を組み立てた、漫画の設計図にあたる原稿のことです。
冨樫さんの場合は、複数の展開を考えていても、そのすべてを打ち合わせで説明するわけではありませんでした。
まず描いてから、という進め方が多く、矢作さんもネームを受け取って初めて続きが分かる。
そのため、一人の読者に近い感覚で楽しめたといいます。
この違いは、物語を準備するかどうかの違いではありません。
矢作さんは、章の終着点を考え、前半の仕掛けを最後につなげる姿勢は二人に共通していたとも説明しています。
打ち合わせで先に共有する部分と、実際に漫画にして見せる部分が違っていたのです。
分かりにくいところを伝えると、冨樫さんは直した
2014年のインタビューでは、分かりにくい部分を指摘すると、冨樫さんは理解しやすく、さらに面白く直してくれたと話しています。
矢作さんが編集の仕事について大切にしていたのも、作者から出てきた面白さが、読者へ伝わることでした。
新しい展開を楽しみに待ち、読んでつまずく箇所は具体的に伝える。
冨樫さんの発想を受け取りながら、読者にどう届くかを確かめる関わり方が見えてきます。
まとめ
矢作さんの話から分かるのは、担当編集者でも、作者の頭の中をすべて知ってから仕事をするとは限らないことです。
冨樫さんが漫画にしたものを最初の読者として受け取り、面白さを損なわずに伝わりやすくする。
冨樫さんの発想を生かすことと、読みづらい箇所を直してもらうことは、二人の仕事の中で両立していたのです。
冨樫さん自身の創作談を読みたい方は、対談・インタビューの掲載先もまとめています。


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