冨樫義博はどうやって物語を作る?キャラクターと展開の決め方

冨樫義博と石田スイの対談を告知する公式ビジュアル 冨樫義博
創作について語り合った冨樫義博×石田スイの特別対談。©冨樫義博・石田スイ/集英社 出典:少年ジャンプ+ 特別対談。

冨樫義博さんは、おおよその筋を考えてから漫画を描き始めます。
その途中で、予定とは違っても人物にぴったりの台詞が出てきたら、筋の方を変えると話しています。
キルアの性格も、背景や顔を決めた後、ゴンたちと会話させる中で形になりました。

設定を用意することと、そこから思いがけない展開が生まれること。
本人の対談や番組への回答には、その両方を大事にする作り方が見えてきます。

人物に合う台詞が出たら、予定していた筋を変える

2016年の石田スイさんとの対談では、人物に合う台詞を選んで当初の筋を捨てるときの方が、漫画が面白くなると話しています。

ヒソカについても、動かし方を決めようとするほど、うまくいかないことがあるといいます。
対談当時の本編では、周囲の状況や戦闘の条件を用意し、その中でヒソカがどう動くかを考えるやり方を取っていました。
もっと動かせたのに自分で抑えてしまった部分には、心残りもあるそうです。

髪を下ろしたヒソカが話すコマ
『HUNTER×HUNTER』第7巻のヒソカ。©冨樫義博/集英社 出典:冨樫義博×石田スイ 特別対談。

キルアの性格は、ゴンたちとの会話から生まれた

人物を作るとき、何から決めるのでしょうか。
2023年の『イワクラと吉住の番組』への書面回答で、冨樫さんはキルアを例に、その順序を明かしました。

出発点は、ゴンと同年代の仲間を登場させるという、物語上の役割でした。
そこから並外れた身体能力や暗殺一家という背景が決まり、その背景に合う顔ができていきます。
最後にゴンたち三人と会話をさせ、性格が決まったといいます。

顔、性格、境遇を決める順番は固定されておらず、物語の流れの中で決まっていくと説明しています。

冨樫さんは、性格を考える際には、相手の意見にどう反応するかも重視しています。
たとえば正義感の強い人物でも、何を正義とするか、反論されたときにどう答えるかで、その人らしさは違ってくる。
会話を考えることで、性格や背景をさらに補ったり、直したりできると説明しています。

ヒソカは、過去を説明すればするほどよくなるわけではない

人物の背景を考えることと、その背景を読者に説明することは別です。
石田さんとの対談の終盤では、ヒソカの過去が話題になりました。

ヒソカの物語を描いた石田さんは、裕福な家の子だった案も、貧しい家で育った案も考えたものの、家庭が見えるとヒソカらしくなくなる感覚があったと話します。
冨樫さんも、はっきり分からない部分が魅力になるという考えを示しました。
当時、本人の中にもヒソカの過去の具体的なイメージはなく、なるべく考えないようにしていたといいます。

少年時代を描くことには関心を示しつつも、さらに幼い頃までさかのぼれば、親や家庭の説明になってしまう。
そこまで説明すると、明かしすぎるように感じるというのです。
キルアのように背景から顔や性格を作る場合もあれば、ヒソカのように家庭を説明しないことで保たれる魅力もあるのでしょう。

登場人物を極端に増やすと、何が起こるのか

一人の人物をどう作るかだけでなく、物語全体でも試みがあります。
『ジャンプGIGA 2016 vol.2』に掲載された岸本斉史さんとの対談では、『HUNTER×HUNTER』で進めていたシリーズについて、登場人数を極端に増やす挑戦をしていると語りました。

冨樫義博と岸本斉史の対談を掲載したジャンプGIGA 2016 vol.2の表紙
冨樫義博×岸本斉史の対談を掲載した『ジャンプGIGA 2016 vol.2』。©集英社 出典:少年ジャンプ+の書誌。

人数を増やしたらどうなるかを試し、それでも物語が破綻しなければ面白い。
冨樫さんは、結末を見通せない方向へ話を進めたいという考えとともに、この試みを説明しています。
『HUNTER×HUNTER』の大勢の人物が絡む展開には、そうした意図的な実験もあるのです。

まとめ

冨樫さんの制作談を読むと、人物を思いどおりに動かすことだけが、物語を作る面白さではないと分かります。
台詞に合わせて筋を変える話にも、大人数を動かす挑戦にも、すでに考えた展開で満足せず、さらに面白くできないか試す姿勢が見えます。
読者を驚かせる展開の裏には、作者自身も試しながら進める仕事があるのです。

この記事もおすすめ

コメント

アクセス解析について
タイトルとURLをコピーしました