『レベルE』は、冨樫義博さんが『幽☆遊☆白書』と『HUNTER×HUNTER』の間に描いたSF漫画です。
『週刊少年ジャンプ』に月一回の形で掲載され、ジャンプコミックス全3巻にまとまりました。
宇宙人の王子が周囲を振り回す話を軸に、笑い、気味の悪さ、ゲームの仕掛けが章ごとに顔を出します。
元担当編集者の回想には、十年後の自分が楽しんで読むために漫画を描いていた、という制作の姿も残されています。
頭のよい王子が、周りを困らせるために動く
物語の中心にいるのは、地球へやって来たドグラ星の王子です。
優れた頭脳の持ち主ですが、その能力を周囲が困るような仕掛けにも使います。
人間の高校生だけでなく、王子に仕える宇宙人たちまで、その騒動に巻き込まれます。
地球を訪ねる宇宙人と、迎える人間たち。
その出会いを描きながら、何が本当で誰が何を企んでいるのか、読者の受け止め方を変えていくのが『レベルE』です。
王子を頼りにしてよいのか、それとも警戒した方がよいのかという面白さがあります。
小学生の戦隊まで作ってしまう
章が変わると、騒動の形も変わります。
第2巻で描かれるのは、王子に選ばれた小学生五人の「カラーレンジャー」です。
子どもたちは、本人たちが望んだわけでもないのに、戦隊のメンバーにされてしまいます。

さらに、王子が用意したRPG仕立ての冒険へも進みます。
宇宙人との遭遇を描いていた作品が、今度はゲームの決まりに沿って進む冒険になる。
ゲームを物語に組み込む作り方は、『HUNTER×HUNTER』のグリードアイランド編を思わせる部分でもあります。
話ごとに違う人物や題材を扱う構成なので、次の章で何が始まるのかも楽しみになります。
全3巻でも、いくつもの物語に触れた感覚が残る作品です。
『週刊少年ジャンプ』に載った全16話の掲載号
連載が始まったのは『週刊少年ジャンプ』1995年42号、最終話が載ったのは1997年3・4合併号です。
「月一連載」は、月刊誌に載っていたという意味ではありません。
週刊誌の中に、間隔を空けて登場する漫画でした。
| 『週刊少年ジャンプ』の掲載号 | 掲載話 |
|---|---|
| 1995年42号 | 第1話 |
| 1995年46号 | 第2話 |
| 1995年50号 | 第3話 |
| 1996年3・4合併号 | 第4話 |
| 1996年5・6合併号 | 第5話 |
| 1996年11号 | 第6話 |
| 1996年15号 | 第7話 |
| 1996年19号 | 第8話 |
| 1996年22・23合併号 | 第9話 |
| 1996年28号 | 第10話 |
| 1996年32号 | 第11話 |
| 1996年37・38合併号 | 第12話 |
| 1996年42号 | 第13話 |
| 1996年46号 | 第14話 |
| 1996年51号 | 第15話 |
| 1997年3・4合併号 | 第16話 |
最初の三話は42号、46号、50号と、4号ずつ進んでいます。
その後には3・4合併号と5・6合併号への掲載があり、22・23合併号から28号へ進む箇所もあります。
掲載号を追うと、毎回決まって4号ずつ進む連載ではなかったことが分かります。
雪隆と王子の最初の騒動は第1〜3話にまたがり、カラーレンジャーの話も複数話で進みます。
短い連作として読める構成と、一話が雑誌に載る間隔は、分けて見ると分かりやすくなります。
月一連載で、十年後の自分を楽しませる漫画を
『幽☆遊☆白書』の連載終了は1994年。
その翌年の1995年42号に始まった『レベルE』は、1997年3・4合併号で完結します。
1998年開始の『HUNTER×HUNTER』へ進む前に、冨樫さんは違う形の連載に取り組んでいたのです。
当時の制作について、元担当編集者の矢作康介さんのインタビューに、印象的な話があります。
矢作さんが見た冨樫さんは、窓とカーテンを閉め、電話線も抜いた部屋で、デスクスタンドだけを使ってネームを描いていました。
理由を尋ねると、人類が自分一人になった状況を想像し、十年後、退屈している自分が読んで楽しめる漫画を描いている、という趣旨の答えが返ってきたそうです。
矢作さんは、自分のために漫画を描いていることに驚き、作品の面白さにも納得したと振り返っています。
漫画を読む相手として想像していたのは、未来の自分でした。
自分がどんな話を面白いと思うかを追いかける制作の様子が、この回想から伝わってきます。
連載終了から時間がたっても、読み返したくなる三冊
『レベルE』は2011年にテレビアニメにもなりました。
出演した中川翔子さんは、アニメ公式サイトのインタビューで、台詞や話の間に入るイラストの濃さに触れ、年に一度は読みたくなる作品だと話しています。

ジャンプコミックスなら三冊でひと通り読めるのも、手に取りやすいところです。
まずは第1巻から、王子の仕掛けに付き合ってみると、笑えるのに油断できない作品の調子がつかめます。
まとめ
『レベルE』の魅力は、次の話で何が始まるのか分からない、その幅広さにあります。
王子の悪ふざけに付き合っていたはずが、ゲームの冒険へも連れていかれる。
作者の好きな題材や仕掛けを詰め込んだ一作として読むと、幽助やゴンの長編とは違う形で、冨樫さんの発想を楽しめます。


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