『幽遊白書』御手洗はなぜ、自分の弱さを認められるようになったのか

事件後、教師と進路について話す御手洗 幽☆遊☆白書
冨樫義博『幽☆遊☆白書』17巻/集英社

天沼に弱さを突かれた御手洗は、「ボクは弱い」と認める。
続けて口にするのは、「でも変わる」という言葉だ。
初めは人間への憎しみをぶつけていた少年が、ここでは自分の過ちを落ち着いて話している。

この変化を支えたのは、桑原たちに助けられた経験だった。
敵だった自分にも手を差し出す相手に出会い、御手洗は人間への見方を改め、自分の過ちにも向き合うようになる。
その過程をたどると、弱さを認める台詞が、彼にとって前へ進む言葉になっている理由が見えてくる。

人間を責めながら、自分も責めていた

御手洗が見た「黒の章」は、人間が犯してきた残酷な行いを集めた記録だった。
彼はその内容を幽助たちに語り、人間は生きていてはいけないと訴える。
その会話の中で、自分も苦しんでいることを打ち明けていく。

眠れば殺された人々の夢を見る。
自分が手を下したように感じ、何かを償いたくなる。
人間への嫌悪は、自分にも向かっていた。
黒の章を思い出すたびに、自分まで汚れているように感じてしまうのだ。

最後にこぼれるのは、誰でもいいから、どうすればいいのか教えてほしかったという本音だ。
人間を滅ぼす計画に加わりながら、本人も自分の苦しみを持て余していた。
桑原は、その御手洗が助けを求めているように見えたと、幽助に話している。
桑原のその言葉は、御手洗があとから打ち明ける本音と重なる。

敵だった自分にも、手が差し出される

桑原は、自分と友人たちを襲った御手洗を、戦いが終わった後に助ける。
仙水の襲撃で本棚が倒れたときには、ぼたんも御手洗をかばう。
自分は敵なのに、なぜ助けるのか。
御手洗の疑問に、ぼたんは、危ないと思ったからだと答える。

御手洗は、桑原も含めた人間全体を否定していた。
その桑原が、自分を襲った敵の命を救っている。
人間の残酷さを知った御手洗は、今度は人間に助けられる経験をした。

蔵馬も、人間には耐えがたい一面があると認めたうえで、そんな人間ばかりではないと御手洗に伝える。
黒の章に記録された悪がある一方で、桑原のように敵を助ける人もいる。
御手洗は、その両方を知ったうえで、人間を見直していく。

蔵馬たちを呼び止める御手洗と、手を差し出す蔵馬・ぼたん
冨樫義博『幽☆遊☆白書』15巻/集英社

蔵馬たちが去ろうとすると、御手洗は自分から呼び止める。
振り返った蔵馬とぼたんは、笑顔で手を貸そうとする。
傷ついた御手洗を、二人は支えようとしている。
自分から呼び止めた御手洗と、それに応じる二人の笑顔に、敵同士だった関係の変化が表れている。

やがて御手洗は、仙水たちにさらわれた桑原を救うため、洞窟の案内役を申し出る。
人間全体を滅ぼそうとしていた少年に、いまは助けたい相手がいる。
自分の知っている道を教え、救出に役立とうとする。
人への信頼を取り戻していく過程が、この行動にも表れている。

「弱い」の後に、「変わる」が続く

天沼は、御手洗も自分も学校で仲間外れだったという話を持ち出す。
そして仙水の言葉として、自分は強いから、御手洗は弱いから周囲に疎外されたのだと伝える。
その挑発に対し、御手洗は、自分の弱さを認められず周囲を憎み、恐ろしい計画に手を貸してしまったと語る。

黒の章を見たときには、自分が犯したのでもない罪まで、自分がしたかのように感じて苦しんでいた。
天沼に話すときには、周囲を憎み、計画に加担したという、実際に自分がしたことを振り返っている。
そして、認めたところで話を終えず、変わると告げる。
実際、彼はすでに計画を止める側に加わり、桑原の救出を手伝っている。
過ちを語る言葉と、それを改めようとする行動が、このときの御手洗にはそろっている。

事件後、教師と進路について話す御手洗
冨樫義博『幽☆遊☆白書』17巻/集英社

事件後、教師と進路を話す御手洗は、穏やかな表情を見せる。
志望校への合格後には、海外留学を経て、環境問題や国際ボランティアに携わることも示される。
天沼に語った決意は、戦いが終わった後の暮らしへ続いている。

桑原たちに救われた御手洗は、他人を信じ直し、自分の過ちも認めるようになった。
弱かったと認めたうえで、これからの行動を変えていく。
天沼への返答には、そうして立ち直り始めた御手洗の姿が表れている。

この記事もおすすめ

コメント

アクセス解析について
タイトルとURLをコピーしました