飛影に敗れた武威は、とどめを刺すよう求める。
武威には、かつて戸愚呂に敗れても、強くなろうと努力を続けた過去がある。
戸愚呂への敗北は再戦を目指す修行につながり、飛影への敗北は、生きる意味を失うほどの絶望につながった。
二つの敗北を分けるのは、武威が「これからの自分」に何を期待できたかである。
鍛えた力を信じていた武威
決勝に現れた武威は、巨大な斧と重い鎧を身につけている。
鎧を着ているのは、相手の攻撃から身を守るためではなく、自分の強大な力を抑えるためだ。
戸愚呂に負けた後も修行を続けた武威は、自分でも抑えきれないほどの力を持つに至っていた。

飛影に斧を溶かされると、武威は鎧を脱ぐ。
斧が通用しなくても、まだ抑えている力がある。
武威はその力を解放して戦おうとする。
負けを知っている武威にも、鍛えた自分の強さを信じる気持ちが残っている。
勝ったと思った直後に、さらに強い飛影が現れる
鎧を脱いだ武威は、武装闘気をまとって空中に浮き、飛影にも本気を出すよう促す。
蔵馬が驚くほどの闘気を見せながら、いい思い出にしてやると挑発する姿には、自信がある。

飛影も、右腕の力を抑える包帯を解く。

その飛影を前に、武威は勝つための手順を考えていた。
炎殺黒龍波を跳ね返せば、黒龍が飛影自身を焼くと考えていたのだ。
そして実際に、武威は押し寄せる黒龍波を跳ね返す。
黒龍が飛影をのみ込んだとき、武威は声を上げて喜んだ。
その喜びの直後、飛影は無傷で現れる。
黒龍の力を吸収し、自分の妖力をさらに高めていたのだ。
武威が最強の技を破ったと思ったところから、飛影の本当の強さが現れる。
武威は攻撃を重ねても動じない飛影に、完敗する。
自分の力で勝てたと思った直後に、なお大きな差を突きつけられたのだ。
「次は勝つ」と思えなくなった敗北
敗れた武威は、戸愚呂との力の差を話した後、飛影にも完全に負けたと続ける。
そして「もはや生きる意味もない」と告げる。
この言葉には、二つの敗北の間に続けてきた努力がある。
戸愚呂に負けた直後は、まだ強くなる可能性があり、再戦を目標に修行を続けられた。
今の武威は、自分では限界まで強くなったと語る。
その間に戸愚呂も強くなり、力の差は逆に開いていた。
そこへ飛影にも完全に負けたことが重なる。
もう一度努力すれば今度こそ勝てる、という期待を失ったのだ。
もっと強くなることが、本当に不可能だと決まったわけではない。
ここで語られているのは、強くなることに望みを託してきた武威自身の諦めである。
飛影はとどめを刺すよう求められても応じず、試合を終える。
その後、武威が再び立ち上がれたかは描かれない。
武威が失ったのは、今回の勝利だけでなく、再び勝つ日を目指して戦い続ける望みだった。


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