「楳図かずお大美術展」の2022年東京展は、新作の連作絵画と、漫画をもとに別の作家が作った空間作品を組み合わせた展覧会でした。
漫画の場面を映すモニター、新作101点を掛けた壁面、素描を取り込んだ小部屋。
会場を進むと、楳図作品を見る方法も変わっていく構成です。
東京展の会期は2022年1月28日から3月25日までで、会場は六本木ヒルズの東京シティビューでした。
ここでは、その東京展の展示を振り返ります。
漫画の配線が、モニターのある空間になる
会場は『漂流教室』のグラフィックゾーンから始まり、『わたしは真悟』をテーマにした展示へ進みます。
エキソニモが制作した《回想回路(Callback)》には、大量のケーブルと、大小のモニターが置かれました。
モニターには、漫画に登場する人物や文字、機械の内部を思わせる場面が映ります。

窓の外には、物語でも大切な場所となる東京タワーが見えます。
漫画の中の場所と、会場から見える実際の風景が、同じ視界に入る展示でした。
楳図さんが機械の内部や配線をどう描いたかを知ると、ケーブルがあふれる装置と、原作の細かな線とのつながりも楽しめます。
新作は、一枚ずつの絵と物語の両方で見せる
年譜や過去の作品、関連資料をたどった先には、楳図さん自身の新作『ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館』がありました。
『わたしは真悟』の続編に位置付けられた、101点の連作絵画です。
壁面に並ぶ絵は、一枚ずつに見どころがあり、続けて見ると物語にもなっています。

楳図さんは開幕時の発言で、漫画と絵画の両方の良いところを表したかったと説明しました。
額縁にもこだわり、連作に合う赤と緑を基調にしたと話しています。
101点をつないで物語を見せるという制作の狙いは、楳図さんが漫画と絵画の関係を考えた仕事でもあります。
素描の部屋では、光と影が見え方を変える
次の部屋では、着彩前の素描101点と、冨安由真さんの《Shadowings》が組み合わされました。
楳図さんの素描を周囲に掛け、部屋の中央には小屋のような構造物を置いています。

冨安さんは、素描から着想して家具やオブジェを選び、部屋全体を演出しました。
窓や階段のある小屋に光が当たり、その周囲が暗くなる。
写真を比べると、同じ場所でも、壁の素描と小屋のどちらが目立つかが変わっています。

線で描かれた絵と、その絵から別の作家が作った空間を、一緒に見る。
楳図さんの新作と冨安さんの作品が、同じ部屋で関わり合う展示でした。
『14歳』の人物の顔は、振り子にもなる
『14歳』のグラフィックゾーンに続く鴻池朋子さんの展示では、登場人物の顔が、実際に動く作品にもなりました。
《振り子 ゴキンチの先生》は、作品終盤に登場する顔をおもりにした振り子です。

鴻池さんはほかにも、新作の素描に着想したドローイングや、『14歳』の言葉を左手で書き写した作品を制作しています。
楳図作品から選んだ顔や言葉が、揺れる立体や、新しく描く線へと変わりました。
会場の最後には、『漂流教室』と『14歳』をつなぐ「未来へ」の展示が置かれています。
まとめ
東京展では、楳図さんの作品と、別の作家がそこから何を選び、どう形を変えたかを、同じ会場で見られました。
楳図作品の人物や場面が、他の人の手で、モニターや小屋や振り子になる。
楳図作品を読む楽しさに、作品が別の表現を生んでいく過程を見る面白さを加えた展覧会でした。


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