冨樫義博さんの漫画では、ゲームのルールを知ることが、その先の展開を読む楽しさにつながります。
登場人物が工夫した使い方を見せる一方、別のルールに阻まれることもあるからです。
『レベルE』のカラーレンジャー編と、『HUNTER×HUNTER』のグリードアイランド編には、その作り方がよく表れています。
『レベルE』では、ゲームを作った王子の性格が仕掛けに表れます。
G・Iでは、プレイヤーがカードの条件を利用して作戦を立てます。
どんなルールがあるかだけでなく、それを誰が、どう使うかまでが物語になるのです。
『レベルE』では、ゲームを作った王子の悪趣味が仕掛けになる
冨樫さんは『幽☆遊☆白書』の後、『HUNTER×HUNTER』の前に『レベルE』を描きました。
その中で、小学生五人をカラーレンジャーにした王子は、さらに五人を惑星カルバリのゲームへ巻き込みます。
王子が用意していたのは、魔王を倒すだけの冒険ではありません。
王子は、五人が安全な状態で苦しみもがく様子を見たかったと説明します。
普通の冒険で夢中にさせてから、罠にかけるつもりでした。

王子は、人間不信になるような町や、欲望を刺激する道具まで用意しています。
プレイヤーがどんな選択をするかを、ゲームの町や道具そのものに織り込んでいるのです。
五人の力を合わせた技でなければ倒せない敵も配置したと語ります。

ゲームの説明を読むうちに、どんな冒険ができるかと同時に、王子がどんな反応を引き出したがっているかも分かってきます。
ゲームの内容が、そのゲームを作った人物の性格まで伝える構成です。
G・Iでは、呪文の説明を読むことが攻略の入口になる
『HUNTER×HUNTER』のグリードアイランド、通称G・Iでは、ゲームを攻略する手段に呪文カードが加わります。
第14巻には、40種類の呪文カードの一覧が掲載されています。
移動や攻撃、防御などの効果が、個別の条件とともに示されるのです。
原作でも、呪文の使い方を知らなければ不利になることが話題になります。
登場人物は仲間へ作戦に必要な情報を渡し、カードの効果を覚えるよう求めます。

カードの情報は、登場人物の手元にある攻略の資料であり、読者が作戦を理解するための説明にもなっています。
カードの効果を読んでおくと、人物が工夫した使い方を見せたとき、読者も理由を追えます。
「複製」は、使う前の準備にも意味がある
条件の使い方がよく分かるのが、呪文カード「複製(クローン)」です。
プレイヤーは、ゲームのカードを本(バインダー)のポケットに収めます。
「複製」は、その本の指定ポケットに入っているカードから、無作為に一枚を複製します。
何枚も入っていれば、欲しいカードが選ばれるとは限りません。
そこでビスケは、ゲンスルーから借りた本の指定ポケットに、治療用の「大天使の息吹」だけを残してから、「複製」を使おうとします。
指定ポケットに残すカードを一枚にすれば、複製の対象をその一枚に絞れるからです。
カードを整理する小さな動作が、ルールを利用した準備になっています。

ところが、この場面の「複製」は失敗します。
「大天使の息吹」が、ゲーム内でカードとして存在できる枚数の上限に達していたためです。
複製の対象を絞ることと、実際に複製できることは別の条件でした。
キルアは、ゴレイヌが持つ引き換え券から「大天使の息吹」が増えたのではないかと考えます。
別の場所で別のプレイヤーが持つカードも、目の前の作戦に関わってくるのです。
読者は、ビスケがなぜ指定ポケットを整理したのかを理解した後、どの条件が見落とされていたのかも考えられます。
ルールの説明が、準備の意味と失敗の理由の両方をたどる手がかりになっています。
まとめ
二つの作品を比べると、ゲームの説明は冒険の前置きだけでなく、人物の行動を理解する手がかりにもなっています。
王子がなぜその町を用意したのか、ビスケがなぜカードを整理したのか。
ルールと人物の判断を一緒に読めるところに、冨樫さんのゲーム描写の面白さがあります。


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