鬼頭莫宏さんの『のボルダ』は、自分がボルダリングを楽しむ中で感じたことを、漫画の入口にした作品です。
スポーツに抱く一般的な印象と、実際に登る人たちの姿との違いを見せようとしました。
主人公は、23歳の会社員・森下藤子。
ジムの雰囲気や、登る楽しさを伝える描写に、作者自身の経験が使われています。
楽しくても、最初は漫画にできないと思った

鬼頭さんは2022年のインタビューで、動かしにくくなった右手のリハビリとしてボルダリングを始めたと話しています。
やってみると面白い。
しかし、漫画の題材にはしにくく、描くのは無理だと思っていたそうです。
漫画で選んだ入口が、一般的なスポーツのイメージとの違いでした。
派手な勝負や駆け引きとは違う面白さを、登る人の様子から伝える方向です。
スポーツの印象を、ジムの静かな姿から変える

新潮社の第1巻紹介では、藤子は2日に1回ジムに通い、課題を登ることで少しずつ成長する人物です。
趣味を見つけた会社員の、ジムに通う生活が描かれます。
本編の見本では、登る一人を周囲が見守り、短い言葉で応援しています。
鬼頭さんは取材で、このような描写には、自分の経験や感想を素直に使っていると説明しました。
登り方も、藤子の絵と手書きの言葉で伝える
作者が趣味の知識を伝える方法は、本編だけではありません。
第1巻刊行時の公式紹介には、書店特典として描いた、ボルダリング用語の解説イラストも掲載されています。
藤子が登る姿のそばに、手書きのコメントが添えられています。
人物の姿勢を見ながら、登り方を表す言葉も知るためのイラストです。
ここに載せたものは、2022年の特典告知に掲載された見本です。
楽しさと、夢中になりすぎるところまで

取材では、次の一手が取れないと、そのことばかり考えてしまう熱中ぶりにも触れています。
鬼頭さんは連載開始時の作者コメントでも、作品を読んでボルダリングを始める人へ、無理をしないよう呼びかけていました。
鬼頭さんはコメントの最後に、自分も経験者だと添えています。
『のボルダ』は全4巻で完結しています。
登る技術とともに、人との友情や恋愛も描く作品になりました。
まとめ
鬼頭さんが漫画にしたのは、ボルダリングのルールや技術だけではありません。
どんな人がジムへ来て、何に面白さを感じ、また登りたくなるのか。
その趣味を楽しんだ人の実感を、藤子の通うジムの日常から読めるところが、『のボルダ』の入口になっています。




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