鬼頭莫宏の作品を読む順番|SF・短編・趣味の漫画を選ぶ

少年少女の前景、海辺の集団、巨大ロボットと飛行機を描いた『ぼくらの』のカラー図版。 漫画家・作者
『ぼくらの』/鬼頭莫宏、小学館IKKI。文化庁メディア芸術祭の作品紹介掲載図版。

鬼頭莫宏さんの初期の仕事からたどるなら、『残暑』などの短編から『ヴァンデミエールの翼』へ進み、『なるたる』『ぼくらの』を読む順番があります。
長編から読みたい人は、『なるたる』『ぼくらの』の気になる設定のほうから選べます。
自転車やボルダリングに興味があるなら、『のりりん』『のボルダ』も入口になります。
ここでは、読みたい内容に合わせて六つの作品・作品集を紹介します。

初期からたどるなら、短編集の『残暑』から

『姫さまのヘルメット 鬼頭莫宏短編集1987-2022』には、デビュー作『残暑』を含む12本の読み切りが入っています。
1987年から2022年までの作品を集めた本なので、初期の仕事を知りたい時は、まず『残暑』や『三丁目交差点電信柱の上の彼女』から読む方法があります。
一冊の中に、長い活動期間の短編がまとまっている作品集です。

次の候補が、『ヴァンデミエールの翼』です。
講談社の紹介では、魂を宿した自律人形が、自由と自立を求める初期連作として案内されています。
生身の人間とは違う体を持ちながら、自分の意思で生きようとする存在に関心がある人は、ここから入ってもよいでしょう。

『残暑』は学生時代の発表作で、『ヴァンデミエールの翼』は1995年の四季賞準入選作から連載へ進んだ仕事です。
受賞から会社勤め、上京までの経歴も知ると、初期作品を作者の歩みの中に置けます。

SF長編から選ぶなら『ぼくらの』と『なるたる』

『ぼくらの』は、夏休みに集まった少年少女が、海辺の洞窟で出会った男にゲームへ誘われるところから始まります。
その契約は、巨大ロボットを操縦して戦うことにつながっていました。
操縦には命の代償があり、子どもたちは自分が生きた時間や、周囲の人との関係にも向き合うことになります。
大きな戦いの中で、一人ずつの人生を描く物語に関心がある人に向いた入口です。

少年少女の前景、海辺の集団、巨大ロボットと飛行機を描いた『ぼくらの』のカラー図版。
『ぼくらの』のカラー図版/鬼頭莫宏、小学館IKKI。文化庁メディア芸術祭の作品紹介に掲載。 出典

『なるたる』は、小学6年生の玉依シイナが、不思議な存在のホシ丸と出会う長編です。
シイナの身近な暮らしから、少年少女たちを巻き込む地球規模の物語へと広がっていきます。
不思議な生き物と少年少女の関わりが気になるなら、こちらを選べます。

二作は、それぞれ別の主人公と設定を持つ物語です。
作者の仕事の順にたどるなら『なるたる』から『ぼくらの』へ。
巨大ロボットと子どもたちの契約に惹かれたなら、『ぼくらの』を先に読むこともできます。

趣味の世界から選ぶなら『のりりん』と『のボルダ』

『のりりん』は、自転車嫌いの丸子一典が、ロードレーサーの織田輪と出会う漫画です。
自転車に乗ることを拒んでいた大人が、その世界へ入っていくところが出発点になります。
鬼頭さん自身も自転車を楽しんできた人で、2017年の取材では、オートバイからマウンテンバイク、ロードバイクへと関心が広がった経緯を話しています。
自転車の知識や走ることに興味がある人にとって、作者の別の面に触れられる作品です。

『のボルダ』は、会社員の森下藤子がボルダリングに取り組む漫画で、全4巻で完結しています。
ジムの壁にある課題を、一手ずつ登っていく日々が描かれます。

鬼頭さんは2022年のインタビューで、ボルダリングについての実体験や、自分が感じたことを素直に漫画にしていると話しました。
スポーツに抱く一般的なイメージとのずれを入口にしたかったとも語っています。
体を動かす趣味や、ジムに通う人たちの関わりに興味があるなら、『のボルダ』から読み始める方法もあります。

まとめ

鬼頭さんは2017年の取材で、漫画を通して何を見るかは自由だと話しています。
SF長編を読んだ後に、自転車やボルダリングの漫画へ進むと、同じ作者が身近な楽しみをどう描くかにも出会えます。
知っている一作から、今度は違う題材の漫画へ。
好きな分野を手がかりに選んだ一冊から、鬼頭さんの仕事の幅も見えてきます。

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