岩明均の『七夕の国』は、1996年から1999年に連載された、単行本全4巻のSF漫画です。
物に小さな穴をあける力を持つ大学生・南丸洋二が、ある町の秘密や奇妙な事件に巻き込まれていきます。
この漫画が2024年に実写ドラマになるとき、岩明さんは映像化作品を「孫」にたとえ、自分には思いつかない技術や映像への期待を語りました。
実際の制作では、主人公をどう演じるか、球体をどう見せるかに、それぞれ工夫がありました。
原作者の言葉と、監督・主演俳優が語った撮影の話から、『七夕の国』が漫画からドラマになる過程を紹介します。
岩明均は、映像化作品を「孫」と呼んだ

『寄生獣』や『ヒストリエ』で知られる岩明さんは、『七夕の国』でも、身近な暮らしに不可解なものが入り込む物語を描いています。
大学生のナン丸が持つ小さな力と、人や街を丸くえぐる怪事件。
この不思議な力と怪事件を映像で見せるために、俳優の演技やCG、音を作る仕事が加わります。
2024年のドラマ化発表時のコメントで、岩明さんは、自分の漫画から生まれた映像化作品を孫のようなものだと説明しました。
岩明さんは、映像を作る人たちの技術にも期待していました。
ナン丸を、作り込みすぎずに演じる

ナン丸を演じたのは細田佳央太さんです。
細田さんは原作を繰り返し読んで役をつかもうとしましたが、撮影前の本読みで、瀧悠輔監督から演技をもっと軽くするよう求められました。
細田さんのインタビューによると、最初はその意味が分からなかったそうです。
細田さんの芝居はドラマチックに作り込まれていたため、瀧監督は、もっと力を抜いた演技を求めていました。
普通の青年が能力の使い方に悩み、成長していく役なので、序盤から演技を強くしすぎないことが大事だったと、細田さんは振り返っています。
瀧監督も、キャストとの座談会で、ナン丸の演じ方について話しています。
瀧監督が原作から受け取ったのは、テンションの高いナン丸でした。
ただ、ドラマではそこから演技を始めず、細田さん本人の謙虚さも役に持たせたいと考えたそうです。
原作を読んで役の手がかりを探した俳優と、俳優の持ち味も含めて人物を作ろうとした監督が、演じ方を調整していました。
球体は、見た目と音、俳優の反応で作る

ドラマ化発表時のビジュアルには、球形に大きくえぐられたビルが描かれています。
建物から丸い形の部分がなくなるという『七夕の国』の異様さを、告知の段階から見せていました。
瀧監督は、球体の映像表現についての取材で、見た目だけでなく、破裂したときの音にも繰り返し手を加えたと説明しています。
映像化にはCGを作る規模に加え、十分な時間や予算も必要だと考えていました。
漫画で描かれた球体を、映像では動きや音まで含めて作っていたのです。

球体の映像表現には、俳優の芝居も関わります。
細田さんは、撮影前に球体の大きさや速度を映像で見せてもらい、撮影直前には発泡スチロールの模型で動きを説明してもらったと語っています。
実際の芝居では、完成後に現れる球体を想像して演じる必要がありました。
何を見るのか、どれくらいの速さで動くのかを、俳優とスタッフが共有していたのです。
漫画のコマに描かれた異変が、ドラマでは俳優の視線や反応とも組み合わされます。
俳優が完成前の球体を想像できるよう、模型や参考の映像が使われていました。
まとめ
岩明さんが映像化作品を孫にたとえた言葉には、自分の漫画から生まれたものを、他の作り手の技術で見せてもらう楽しみがありました。
演技を抑えるか、球体にどんな音を与えるかは、映像を作る人たちが決めていった部分です。
原作を知っている人も、ナン丸の演じ方や球体の動きに注目すると、漫画を映像にするための工夫を楽しめるでしょう。
岩明さんの漫画が、監督や俳優の仕事を通じて、別の表現になるところが、このドラマ化の面白さです。


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