岩明均は会話をどう描く?新人時代の助言と人物の問い返し

剣の舞でハルナが文五郎になぜ戦うかと問い、剣を実戦で使うという返事から目的を問い直す五つのコマ 岩明均
『剣の舞』第二話「門弟」の一部/岩明均、講談社。

岩明均さんの作品では、会話から知識を得るだけでなく、話す人物が何を考え、相手にどう応じるかも読めます。
『剣の舞』では、剣を教える文五郎が弟子から戦う目的を問われ、『七夕の国』では、「窓をひらいた者」をめぐる話が幸子自身の経験へつながっていきます。

岩明さんは新人時代、担当編集者から「もっと“会話”をさせるように」と言われたことを振り返っています。
この助言と、実際の作品のやり取りから、会話を読ませる描き方を見ていきます。

新人時代、編集者に「会話」を求められた

岩明さんがこの言葉を紹介したのは、2013年の取材を再録したインタビューです。
新人時代の担当編集者の言葉として、登場人物がただ言い合っているだけだと指摘されたことを挙げています。

この取材の注釈は、『剣の舞』の文五郎とハルナの会話を取り上げています。
台詞に加えて表情や間を用いることで、二人の微妙な関係が浮かび上がると解説していました。
言葉を交わす場面から人物を知る、という読み方にもつながる説明です。

『剣の舞』では、ハルナが文五郎の戦う目的を問い直す

剣の舞でハルナが文五郎になぜ戦うかと問い、剣を実戦で使うという返事から目的を問い直す五つのコマ
『剣の舞』第二話「門弟」の一部/岩明均、講談社。 出典

『剣の舞』のハルナは、文五郎になぜ戦うのかと尋ねます。
文五郎は、実戦に生かすために剣の腕を磨くのだと答えます。

ハルナは、剣を実戦で使うという返事を手段の説明として受け止め、文五郎自身の目的を尋ねます。
文五郎は問いを聞き返し、目的という言葉を繰り返しています。

『雪の峠・剣の舞』KCデラックス版の表紙
『雪の峠・剣の舞』KCデラックス版/岩明均、講談社。 出典

『剣の舞』は、歴史作品集『雪の峠・剣の舞』に収録されています。

『七夕の国』では、説明する幸子自身の経験も出てくる

窓をひらいた者について尋ねるナン丸に幸子が自分もその一人だと答える場面
『七夕の国』第2巻、「窓をひらいた者」をめぐるナン丸と幸子の会話/岩明均、小学館。 出典

『七夕の国』でナン丸が「窓をひらいた者」について尋ねると、幸子は自分もその一人だと答えます。
この場面で幸子は、うまく説明できず、怖い夢を見ると言えば、それだけになってしまうと話します。

「窓をひらいた者」という言葉を尋ねるナン丸と、そこで自分の経験も明かす幸子。
幸子の返事によって、「窓」をめぐる話と、経験を言葉にしにくい幸子の様子が一緒に伝わります。
ナン丸は、言葉の意味を尋ねる中で、幸子自身の話も聞くことになります。

まとめ

ハルナの問いで文五郎が答えに詰まり、ナン丸の問いに幸子が自分の経験を話す。
読者は話題の知識だけでなく、返事をする人物が何を考え、何を言葉にしにくいのかも知ります。
岩明さんが振り返った編集者の助言は、こうしたやり取りと結び付けると、人物を描くための「会話」として理解できます。

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