『3×3EYES』の続編は、高田裕三が以前から描こうと決めていた長編ではありませんでした。
続編の依頼を受けていた高田は、一度完結した物語を作り直すことに怖さを感じていました。
その後、震災などの体験を経て、自分の中のこだわりが薄れ、頼まれたのだから試してみようと思うようになります。
こうして生まれた『3×3EYES 幻獣の森の遭難者』では、八雲とパイが新たな冒険へ向かいます。

15年描いた物語へ、もう一度戻るのが怖かった
『3×3EYES』は、1987年から2002年まで連載された伝奇冒険漫画です。
人間になりたいと願う妖怪の少女・パイと、彼女の不死身の守護者になった藤井八雲が、長い旅と戦いを重ねていきます。
高田はこの作品で講談社漫画賞を受賞しました。
15年の連載を終えた作品へ戻るという話には、すでに描き切った物語をもう一度動かす難しさがありました。

高田は2015年の和夏弘雨との対談で、続編の依頼そのものはかなり前からあったと振り返っています。
それでも、完結した話を再び練り上げると、うまくいかない作品になりがちだという考えが、再開をためらわせていました。
高田が使った言葉は「怖くて近寄れなかった」です。
八雲とパイをもう一度描く機会があっても、それだけで続編を始められたわけではなかったのです。
体験を経て、失敗してもやってみようと思えた
高田が挙げたきっかけの一つは、震災でした。
対談では、震災だけではないとしたうえで、そうした体験によって自分のこだわりが薄れたと話しています。
高田は、失敗しても構わないから、せっかく依頼された作品を描いてみようと思ったのです。

面白いのは、この時点で高田が最初に考えた形です。
最初に考えていたのは4コマでした。
後に冒険漫画として始まった続編を知っていると、意外な出発点でしょう。
完成した作品の形式が、再開を決めた最初の時点から固まっていたわけではありません。
実際の連載が始まったのは2014年末です。
第1巻は2015年に発売され、ヤングマガジン海賊版で描かれた新しい物語を収めました。
高田にとって、WEBでの連載も初めての経験でした。
八雲とパイだけでなく、仲間たちにも時間が流れていた
『幻獣の森の遭難者』では、前作の最終回から作中で12年が過ぎています。
八雲とパイが戻ってくるだけでなく、仲間たちの暮らしにも変化がありました。
葉子とハーンは結婚し、娘のセツが生まれています。
和夏弘雨は、子どもの頃から『3×3EYES』を読んできた漫画家です。
対談では、葉子やハーンへの思い入れを語りながら、続編で新しい話を支えるように、以前からのキャラクターが出てくる楽しさを話しています。
かつて敵だった舞鬼が活躍することにも喜んでいました。
読者にとっては新しい事件の続きを読むことと、知っている人物のその後を見ることが重なる作品なのです。

連載を再開した高田自身にも、描き方の変化がありました。
同じ対談では、原稿用紙をB4からA4へ小さくしたと説明しています。
初めは手間取ったものの、取材時点では消しゴムやトーンを使う面積が減り、仕上げにかかる時間を短くできていました。
長く描いてきた世界に戻りながら、制作の負担を減らす工夫も重ねていたのです。
まとめ
和夏が楽しんだのは、昔の登場人物が新しい物語を支えてくれるところでした。
葉子とハーンに娘が生まれているように、懐かしい人物との再会にも、以前とは違う姿が用意されています。
高田がもう一度描いてみようとしたことで、読者にも、長く親しんだ人物のその後を読む機会が生まれました。
『3×3EYES』の続編を知る楽しさは、八雲とパイが再登場することに加え、あの物語の後にも仲間たちの人生が続いていたと感じられるところにあります。


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