実写『寄生獣』を岩明均はどう見た?「孫」の感覚とユーモアへの注文

映画寄生獣で泉新一を演じる染谷将太が右手を見る場面 岩明均
映画『寄生獣』(2014年)の場面写真/©2014映画「寄生獣」製作委員会。

岩明均さんは、『寄生獣』の映画化にあたり、原作のユーモアを大事にしてほしいと伝えていました。
後年には、日本でのアニメ化と実写映画化を、自分が描いた漫画から生まれた「孫」のようなものと振り返っています。

山崎貴監督による実写映画『寄生獣』は2014年に、後編の『寄生獣 完結編』は2015年に公開されました。
原作者が伝えたことを、監督がどう受け止め、ミギーの演技へつないだのか。
当時のやり取りと、岩明さんが後に語った映像化への思いをたどります。

映画寄生獣で泉新一を演じる染谷将太が右手を見る場面
映画『寄生獣』(2014年)の場面写真/©2014映画「寄生獣」製作委員会。 出典

岩明均が伝えたのは、原作のユーモアを大事にすること

映画化にあたって、プロデューサーが岩明さんを訪ねました。
山崎監督は、2014年のインタビューで、そこで岩明さんから託された言葉が、ユーモアを大事にしてほしいというものだったと話しています。

山崎監督の説明によると、ただ観客を笑わせるのではなく、何かおかしいと感じさせる部分が大切でした。
山崎監督が重視したのも、人間とミギーが同じ日本語で話していても、考え方に大きなずれがあることです。
山崎監督は、こうした考え方の食い違いから生まれるおかしさを、映画でも大事にしたいと語りました。

目や口と刃状の部分を持つミギーを描いた2026年の寄生獣展の公式広告
原作のミギーを描いた原画展の公式広告(2026年6月の開催告知)/岩明均、講談社。 出典

山崎監督は、ユーモアの話を聞いた時点では、ミギー役はまだ決まっていなかったといいます。
普通に話していても面白みがにじみ出ることが、阿部サダヲさんを選んだ理由の一つになりました。
原作のどんな感触を映像へ残すかという話が、ミギー役を誰にするかにもつながっています。

阿部サダヲは、声だけでなく体の動きでもミギーを演じた

左の阿部サダヲと右の山崎貴監督がミギーの模型を持つ取材写真
ミギー役の阿部サダヲ(左)と山崎貴監督(右)/2015年『寄生獣 完結編』取材写真、映画.com編集部。 出典

映画のミギーはCGで描かれていますが、阿部さんは声だけで役を担当したのではありません。
体や表情の動きを取り込む撮影でも、ミギーを演じています。
山崎監督は、役者がその瞬間に生み出す動きを、ミギーの表現へ生かそうとしました。

阿部さんは、2015年の山崎監督とのインタビューで、ミギーの感情をどう演じるかの難しさも話しています。
新一の感情へ寄せたほうがよいのか、それとも感情が乗らないほうがミギーらしいのか。
人間と寄生生物のずれは、阿部さんが演じるうえでも、答えを簡単には決められない問題でした。

山崎監督は、ミギーの声をもっと乾いたものにしたい人も、もっと感情的にしたい人もいると話します。
原作には音声がありません。
読者がそれぞれ想像していた声に対して、映画では一つの声を選ぶことになります。
原作の持ち味を大事にしながら、映像の作り手と役者が具体的な表現を選んでいくのです。

岩明均は、映像化された作品を「孫」にたとえた

『寄生獣』アフタヌーンKC版第1巻の表紙
原作漫画『寄生獣』第1巻/岩明均、講談社。 出典

2024年、韓国を舞台にした『寄生獣 ーザ・グレイー』の発表に際して、岩明さんは、日本での映像化を振り返りました。
Netflixが公開した本人のコメントでは、原作漫画を「子ども」、アニメーションと実写映画を「孫」にたとえています。

小さな一室で自分の手作業から生まれた漫画が世の中に出て、多くの人々の知恵や経験、技術に出会い、新たな作品になります。
その成り立ちを、岩明さんは子どもから孫が生まれることになぞらえています。

岩明さんは、原作者でありながら、驚きや感動を味わう一人の観客にもなれると語っています。
韓国を舞台にする新しい物語が、自分の想像を超える世界へ案内してくれることに期待していました。
日本でのアニメや映画を通して生まれたこの感覚を、今度は韓国での新しい物語への期待にもつなげています。

まとめ

岩明さんが伝えた原作の持ち味は、映画の作り手が表現を選ぶときの手がかりになりました。
映像化を「孫」と呼ぶ言葉は、その持ち味が、別の人々の知恵や技術と出会う楽しみを表すものとも捉えられます。
映画を見るときにも、原作から受け継ぐものと、役者や監督が選んだ表現の両方に目を向けると、岩明さんの言葉を具体的に捉えられます。

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