岩明均の漫画の笑いをどう読む?『寄生獣』の絵と『ヒストリエ』の言葉への批評

『寄生獣』アフタヌーンKC版第1巻の表紙 岩明均
『寄生獣』アフタヌーンKC版第1巻/岩明均、講談社。

岩明均の『寄生獣』は、恐怖とユーモアが同居する漫画として、連載の早い時期から評されていました。
岩明作品の笑いと緊張には、絵の見え方と人物の言葉という、違う側面があります。
絵の滑稽さが怖さにつながる場合もあれば、人物の冗談が、価値観の違いから生まれる緊張を和らげる場合もあります。
『寄生獣』と『ヒストリエ』への批評から、笑いと緊張の関係を紹介します。

『寄生獣』は、早くからユーモアのあるホラーと評されていた

『寄生獣』アフタヌーンKC版第1巻の表紙
『寄生獣』アフタヌーンKC版第1巻/岩明均、講談社。 出典

『寄生獣』では、高校生の泉新一の右手に、寄生生物のミギーが宿ります。
人間とは違う生物が、主人公の体の一部として暮らす物語です。
異様な姿や人間を襲う寄生生物だけでなく、新一とミギーのやり取りも作品の大きな要素になっています。

1990年の『アサヒグラフ』で、竹内オサムさんは、高校生の生活の現実感と、SFホラーにユーモアが加わる魅力を評していました。
恐怖と笑いの両方を持つところは、連載初期から注目されていたのです。

滑稽に見える絵が、漫画の流れの中で怖くなる

目や口と刃状の部分を持つミギーを描いた2026年の寄生獣展の公式広告
ミギーの姿を使った2026年6月『寄生獣展』の公式広告/©岩明均・講談社。 出典

ミギーは、目や口、刃物のような部分を持つ、奇妙な姿で描かれます。
漫画批評家の島田一志さんは、2026年の作画についての評論で、岩明さんの絵の滑稽さと怖さの近さに注目しています。
絵だけを切り取ると笑えるところがあっても、コマやページの流れの中で読むと、恐ろしいものに見えるという評価です。

人の頭部が大きな口へ変形した姿を描いた2026年の寄生獣展の公式広告
頭部が変形した姿を使った2026年6月『寄生獣展』の公式広告/©岩明均・講談社。 出典

人の頭部が大きな口へ変わる姿も、『寄生獣』の強い印象を作っています。
島田さんが重視するのは、変わった形そのものに加え、その絵をどのような流れで見せるかです。
島田さんの読みでは、絵の滑稽さも、その場面の怖さに関わっています。

『ヒストリエ』では、冗談が異文化との緊張を和らげる

『ヒストリエ』第1巻の表紙
『ヒストリエ』第1巻/岩明均、講談社。 出典

『ヒストリエ』は、古代ギリシア世界を生きたエウメネスの人生を描く歴史漫画です。
エウメネスは旅の中で、自分とは異なる文化や価値観に出会います。

哲学者の谷川嘉浩さんが2025年の取材で挙げたのは、エウメネスの「文化が違~う!」という言葉です。
価値観の違う人々に出会ったとき、違いを茶化してみせる。
谷川さんは、単に違いを強調することと区別し、そこから生まれる緊張をユーモアで包む振る舞いだと評価しました。

谷川さんは、その立ち回りを、エウメネスが幼い頃から多くの本を読んでいたことにも結び付けています。
本を通じてさまざまな他者に出会った経験が、違う価値観への向き合い方にも表れる、という読みです。

まとめ

島田さんは絵の滑稽さと怖さの近さを、谷川さんは人物の冗談と異文化との緊張の関係を読んでいました。
二つの批評を知ると、笑える形や台詞を見つけたときに、その場面で何が怖く、誰がどんな違いに出会っているのかにも、目を向けられます。
岩明さんの漫画では、何がおかしく見えるのかに目を向けることも、人物や場面を読む手がかりになります。

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