あだち充さんは、表情や風景だけのコマを挟む表現について、読者の想像力を信じて描いていると答えています。
さらに、言葉にしない感情を伝えるため、主人公の周囲には、言葉の裏を察する脇役を置いてきたとも話しました。
『タッチ』『H2』などに流れる独特の「間」には、読者に任せる部分と、登場人物同士で伝わるようにする工夫があります。
表情や風景から、読者に想像してもらう
2024年5月14日放送の『イワクラと吉住の番組』に寄せた直筆回答で、あだちさんは、自分の漫画の表現について尋ねられました。
質問は、会話の途中に表情や風景だけのコマを挟み、行間を読ませる演出を、どのように思いつくのかというものです。

あだちさんの答えには、「読者の想像力を信じ切った」という言葉がありました。
台詞で気持ちを説明し切らず、読者が人物の表情や、その前後のやり取りから考えられるようにする。
そんな描き方への信頼を、本人が短い言葉で示した回答です。
言葉の裏を察する脇役が、会話を進める
2025年12月の「あだち充展」スペシャル対談では、あだちさんが、この表現についてもう少し詳しく話しています。
本人が好んだのは、微妙なニュアンスや表に出ていない感情を、台詞で説明せずに伝える描き方です。

その描き方を成立させるには、登場人物同士でも、気持ちを察する力が必要だといいます。
あだちさんは、主人公の周りに、大人びていて、言葉の裏をくみ取ってくれる脇役を置いてきたと話しました。
読者に想像してもらうだけでなく、物語の中でも、口にされなかった気持ちを受け止める人物がいるのです。
日高のり子が語る、風景のコマを読む時間
同じ対談で、『タッチ』の浅倉南を演じた日高のり子さんも、あだち作品を読む感覚を話しています。
台詞のない風景の場面では、いろいろなことを考えるそうです。
その時間があることで物語に入り込み、登場人物をそばから見ているような感覚になると語りました。

一方、演じるときには難しさもあったといいます。
日高さんは、本当の思いとは別の台詞を口にする人物を、声で表す難しさも話しました。
日高さんは『タッチ』の収録で、何度も録り直したと振り返っています。
読んで想像する面白さと、声で伝える難しさの両方を知る人からの話です。
まとめ
日高さんが語った、風景のコマで考える時間は、あだちさんが信じる読者の想像力を、読む側から説明しています。
読者は人物の気持ちを想像し、その場に立ち会うように物語を読む。
台詞の途切れたところにも、その楽しさが続いているのです。


コメント