『幽☆遊☆白書』戸愚呂弟は妖怪になり、雷禅はなぜ食べることをやめたのか

うずくまる雷禅に、幽助が食べるよう促す場面 幽☆遊☆白書
冨樫義博『幽☆遊☆白書』18巻/集英社

戸愚呂弟は、人間の体では届かない強さを求めて妖怪になった。
雷禅は、食人鬼として生きてきた体に逆らい、人間を食べることをやめた。
一方は体を強くし、もう一方は自分の体が衰える選択をした。
二人を動かした相手は誰で、何が違ったのだろうか。

戸愚呂は仇を倒したあと、妖怪になった

戸愚呂の弟子たちは、妖怪の潰煉に殺された。
戸愚呂は潰煉を倒す。
暗黒武術会で優勝した戸愚呂は、妖怪へ転生することを願う。
弟子を守れなかった自分の弱さを知ったあと、戸愚呂が選んだのは、さらに強い体だった。

人間界で強くなりすぎたと語り、妖怪になった経緯を話す戸愚呂弟
冨樫義博『幽☆遊☆白書』第13巻(集英社、部分)。

この選択を、戸愚呂本人は強さの追求として語る。
だが死後、コエンマは、強さを求めて生きてきた戸愚呂の時間を、自分を痛めつけるようなものとして捉える。

戸愚呂弟が強さを求めた人生を、コエンマが振り返る場面
冨樫義博『幽☆遊☆白書』第13巻・第112話(集英社、部分)。

幻海にも、過去を吹っ切って強さだけを追えたと話すが、彼女は「うそだ」と返す。
戸愚呂の言葉だけでは、妖怪化によって弟子を失った傷まで消えたとは言えない。

強さだけを追えたと語る戸愚呂弟に、幻海が反論する場面
冨樫義博『幽☆遊☆白書』第13巻・第112話(集英社、部分)。

雷禅は、出会った女性を思って食事を断った

雷禅はもともと人間を食べる妖怪だ。
雷禅が出会った食脱医師の女性も、病死した人の肉を食べていた。
ただし彼女は、体にできた抗体を薬として人を助けるために食べる。
雷禅はその女性を食おうとして、逆に自分を恐れない彼女の気迫に引き込まれた。
一夜を共にしたあと、彼女に再び会うまで人間を食べないと自分で決める。
二人が再会を約束したわけではない。
雷禅がそう決めたのは女性が生きている間で、彼女はその後に亡くなる。
再会がかなわなくても、雷禅は長い年月、断食を続けた。

食べなければ体は衰える。
幽助に食べるよう迫られても、雷禅はその決心を変えない。
かつての強さを取り戻す道より、もう一度会いたい相手への思いを優先した。

衰弱した雷禅に、人間を食べるよう促す幽助
冨樫義博『幽☆遊☆白書』第18巻(集英社、部分)。

雷禅の断食は、人間全員を救うための宣言ではない。
食人鬼のまま、特定の一人との再会を願った選択だ。
その点を外すと、なぜ雷禅が命を縮めてまで食べなかったのかがぼやけてしまう。

二人の体を変えたのは、同じ思いではない

戸愚呂は弟子を失った過去を持ち、雷禅は女性との再会を願っていた。
戸愚呂の妖怪化を雷禅の恋愛と同じ「純愛」にしたり、雷禅の断食を戸愚呂のような自罰と決めたりはできない。
二人の行動が重なるのは、大切な相手への思いが、自分の体についての選択にまで及んだところだ。

戸愚呂は、弟子を失った過去を変えられないまま、強い体を選んだ。
雷禅は、女性との再会を待ちながら、体が衰えても食事を拒んだ。
戸愚呂の選択は終わった出来事への応答で、雷禅の選択は次に会いたいという願いだった。
強い体と飢えた体を並べると、二人が見ていた時間の向きまで違っていたことが分かる。

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