天沼とのゲームを終えた直後、蔵馬は巻原の姿をした相手に鞭を振るい、その頭部を切り裂く。
やがて相手の正体が戸愚呂兄と分かり、兄は邪念樹によって終わらない幻覚に閉じ込められる。
天沼の死への怒りが、そのまま苛烈な罰になったのだろうか。
蔵馬が最初の一撃に仕込んだものを見ると、怒りと同時に働いていた判断が分かる。
天沼を利用した仙水への怒りを、戸愚呂兄は挑発に使った
蔵馬は、天沼がゲームに負ければ死ぬと気づいていた。
仙水はその危険を少年に知らせず、幽助たちの足止めに利用した。
蔵馬は勝負に勝って先へ進んだが、天沼は一度命を落とす。
後にコエンマが天沼を救うものの、蔵馬が洞窟を進んだ時点では、その結果を知らない。
蔵馬が強く怒った相手は、少年をその状況に置いた仙水だった。

そこへ現れた、巻原の姿をした戸愚呂兄は、室田から奪った「盗聴」で蔵馬の心を読み、天沼を死なせた悔しさを言葉にして挑発する。
蔵馬は仲間を制し、自分が戦うと告げた。

最初の一撃で、蔵馬はもう罠を仕込んでいた
蔵馬は巻原の姿をした相手の頭を斬ってから、正体に気づいたわけではない。
兄の臭いで、巻原の体を操っているのが戸愚呂兄だと見抜いていた。
そして頭部を切った、その最初の攻撃で邪念樹の種も植え付ける。
正体を明かした兄は、巻原を内側から乗っ取り、その恐怖を楽しんだ経緯を話す。
蔵馬は兄を「ゲス」と呼ぶ。
天沼の死を挑発に使うだけでなく、別の人間の苦しみを喜ぶ兄自身にも、蔵馬は怒っている。
戸愚呂兄は、奪った読心能力で蔵馬の考えを把握できるつもりでいた。
一瞬だけ心の声が聞こえなくなると、兄は蔵馬が怒りに我を忘れたと受け取る。
だが蔵馬の一撃には、再生する相手を捕らえる手まで仕込まれていた。
兄が自分の能力を誇り始めるより前に、決着の準備は済んでいる。

その後の煙幕にも役割がある。
蔵馬は敵を見失わせるためだけに煙を出したのではなく、邪念樹の幻覚物質が外へ漏れないようにしていた。
怒りを抱えたまま、蔵馬は罠が仲間に及ぶことまで避けている。
戸愚呂兄の再生力を、終わらない罰に変えた
戸愚呂兄は、体を斬られても再生する。
薔薇の鞭で頭を切るだけでは、兄を止めきれない。
邪念樹は相手に幻覚を見せ、死ぬまで離さない植物だ。
死ねない兄が捕まれば、再生力は脱出の助けにならず、苦しみを長引かせる。

この選択には、再生する敵を封じるという理由がある。
同時に蔵馬は、兄に「お前は『死』にすら値しない」と告げる。
その言葉には、敵を止めるだけでは収まらない蔑みも表れている。
蔵馬は怒りで無策になったのではない。
天沼の死を利用して挑発し、巻原たちの命まで踏みにじった戸愚呂兄を、蔵馬は最初の一撃から捕らえにかかった。
相手の再生力を正確に読めたからこそ、その力を終わらない罰へ変えることもできたのである。


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