赤ん坊だった飛影と、魔界三大妖怪の一人である軀。
二人には、妙によく似た姿がある。
顔を包む帯と、そこに重なる呪符だ。
飛影の過去を語る第18巻では、この似た姿に加え、体内のような戦場と、液体の中で体を修復する飛影が続いて描かれる。
これらを結ぶと、軀との出会いを、飛影がもう一度生まれ直す過程として読むことができる。
生まれてまもなく捨てられた飛影が、今度は自分の過去を知る相手から、生きるように呼びかけられる。
赤ん坊の飛影と軀をつなぐ、似た姿
幼い飛影は、呪符のある帯にくるまれている。
丸い目をのぞかせる小さな顔は、周囲をほとんど覆い隠されている。
軀もまた、顔に帯を巻き、その上に幾枚もの呪符を貼った姿で飛影の前にいる。

この外見の重なりは、軀を飛影の生い立ちと結びつける手がかりになる。
飛影にとって軀は、魔界で強大な勢力を率いる人物だ。
けれども、その姿には、力を持つ支配者とはかけ離れた、捨てられる赤ん坊の飛影が重なって見える。
軀が自分の過去を明かす前から、二人の間にはそんな似方がある。
後に軀が自分の傷を飛影に見せると、この見た目の類似は、痛みを抱えて生きてきた者同士のつながりとして意味を持つ。
戦場から回復の場へ――飛影の二度目の誕生
飛影が時雨と向き合う場所も、奇妙な形をしている。
壁や天井には血管のような筋が走り、出入り口は縦に裂けた隙間のように開いている。
石造りの広間や競技場というより、大きな生き物の体内を思わせる空間だ。


ここで飛影を待つ時雨は、かつて邪眼を移植し、剣術も教えた相手である。
飛影は、自分の体と剣術を変えた人物と戦い、その後、培養液の中で傷ついた体を修復する。
何本もの管につながれ、液体に包まれる姿には、母の胎内にいる子供を思わせるところがある。
戦場の形だけなら、魔界の異様な風景とも読める。
回復の装置だけなら、重傷を治すための設備だ。
しかし、この前後には飛影が生まれたときの回想があり、体内を思わせる空間での戦いから、液体の中での再生へとつながっている。
誕生を連想させる描写が一つの話の中に重なることで、修業を経た成長に加えて、生まれ直しという意味が浮かび上がる。


そして、再生する飛影のそばで、軀は自分の傷ついた体を見せる。
飛影の意識に触れた軀が、今度は自分の意識にも触れてほしいと求める場面だ。
飛影だけが過去を知られ、見定められる立場に置かれるのではなく、軀も自分を相手に明かしている。
そのうえで、軀は飛影に生きるよう告げる。
最初の誕生では、飛影は氷河の国から投げ落とされた。
培養液の中にいる今の飛影には、その過去を知りながら、生きるよう呼びかける相手がいる。
ここに、二度目の誕生として読む意味がある。
軀は、この場面でも右半身を治すつもりはないと語っている。
二人の出会いによって、過去の傷がすべてなくなるわけではない。
傷を持つ軀が、傷ついた飛影を迎える。
飛影の生まれ直しとは、過去を持たない別人になることではなく、その過去を見せられる相手を得て、生き続けることなのだろう。


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