和月伸宏は実写映画『るろうに剣心』にどこまで関わった? 脚本相談から「煉獄」の実現まで

実写映画『るろうに剣心』第1作の佐藤健と主要人物のビジュアル 和月伸宏
ワーナー・ブラザース公式サイト掲載の映画『るろうに剣心』のビジュアル。

和月伸宏さんは、実写映画『るろうに剣心』を最初から最後まで監督したわけではありません。
第1作では脚本の相談に加わり、映画で守りたい『るろうに剣心』らしさを大友啓史監督たちと確かめました。
脚本の方向が定まると映画づくりを監督へ委ね、続編では原作で描ききれなかった場面への思いも伝えています。

最初の映画では、脚本を一緒に考えた

2012年の第1作は、原作が終わってから十年以上を経て作られました。
和月さんは後年のインタビューで、映画化の申し出を、連載を頑張った後にもらった「おまけ」のように感じたと振り返っています。
ただ、その「おまけ」を受け取って終わりではありませんでした。

映画の公式制作記録によれば、和月さんと制作側は脚本を何度かやり取りしました。
和月さんは疑問や意見を伝え、大友監督から演出も含めた説明を受けて、映画を任せたと記されています。
大友監督も対談で、漫画と映画では表現できることが違うため、和月さんと何度も話したと振り返っています。

2012年の実写映画『るろうに剣心』で神谷道場に集まる剣心たち
映画『るろうに剣心』公式の制作記録に掲載された第1作の場面写真。

蒼紫を出す案は、映画の長さに収まらなかった

和月さんは第1作の公開前の取材で、初期の脚本には四乃森蒼紫と御庭番衆も登場する案があったと説明しています。
鵜堂刃衛だけでは敵が少ないため、大友監督とも相談して加えることを考えました。
しかし、剣心の仲間たちも描く映画の約2時間には収まらず、この案は外れます。
映画は刃衛と武田観柳を軸にした話になりました。

ここで原作者が望んだ人物を、監督が単純に拒んだわけではありません。
和月さん自身も映画の長さを踏まえ、何を残すかを監督たちと考えていました。
大友監督は当時のインタビューで、逆刃刀を持つ剣心が人を斬らずに戦う葛藤を、映画で残すべき中心と考えたと話しています。

映画が形になってからは、大友監督に任せた

第1作の脚本がある程度決まった後、和月さんは大友監督を信頼し、制作の細部にはほとんど口を出さなかったと公開前の取材で語っています。
和月さんが求めたのは、筋書きが漫画と多少違っても、作品の雰囲気を壊さないことでした。

完成した映画で印象に残ったのは、赤い衣装の剣心が初めて姿を見せる、原作にはない場面です。
和月さんは一人の作り手として悔しくなるほど良い場面だったと受け止めました。
佐藤健さんの配役やアクションにも強い評価を寄せています。
原作者が関わった映画でも、画面に映る良さを原作者一人で作ったわけではないことが、この反応から伝わります。

続編では、描ききれなかった「煉獄」が映画になった

2014年の『京都大火編』『伝説の最期編』では、和月さんは当時の取材で、前作よりさらに制作側を信頼し、脚本に原作側の意見を伝える程度だったと話しています。
それでも、何も伝えなかったわけではありません。
打ち合わせで和月さんは、原作に登場した巨大戦艦「煉獄」の中で戦い、クライマックスを描きたかったと漏らしました。
原作では果たせなかったその思いが、映画の脚本に取り込まれたのです。

実写映画の巨大戦艦「煉獄」内部での戦い
映画『るろうに剣心』公式の京都編制作記録に掲載された「煉獄」内部の場面写真。

和月さんは完成した「煉獄」のセットも訪れ、狭さや立体感のある作りに感心したと述べています。
原作者が映画の場面を細かく指示したのではなく、原作者が口にした心残りを映画側が受け取り、実写のセットと場面にした出来事でした。

『最終章』でも脚本を確認した

2021年の『最終章 The Final』では、映画側が原作にはない展開を提案し、和月さんに脚本を見せて確認しました。
和月さんは本人への取材で、その提案を歓迎し、自分が当時思いつかなかったことが悔しいほど良いと振り返っています。
映画の具体的な演出は監督と制作側の仕事ですが、原作者は脚本を見て、その変更を受け入れています。

映画『るろうに剣心 最終章 The Final』のビジュアル
ワーナー・ブラザース公式の『The Final』作品ページ掲載のビジュアル。

まとめ

実写映画での和月さんの役割は、全場面を監修して原作どおりにさせることではありませんでした。
最初は脚本を話し合って作品の中心を確かめ、その後は映画の作り手を信頼して任せています。
制作を任せた後も、和月さんの言葉は続編の「煉獄」の場面に届き、『最終章』では映画側の新しい提案を受け入れました。
連載後の「おまけ」と思っていた映画を、和月さんは最終章の公式サイトで大切な「宝物」と呼んでいます。
原作者自身の思いも、映画の作り手たちの新しい発想も入った作品として、その言葉が実写映画の歩みを締めくくっています。

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