『呪術廻戦』の芥見下々さんは、自分を形づくった作品の一つに、冨樫義博さんの『HUNTER×HUNTER』を挙げています。
さらに、冨樫さんが解説を担当した小説『他人事』は、芥見さんがホラーを読むきっかけになった本でした。
芥見さん自身の言葉をたどると、漫画家として受けた影響と、読む作品が広がっていった経緯が分かります。
『BLEACH』の上に加わった『HUNTER×HUNTER』
2021年の『呪術廻戦 公式ファンブック』には、芥見さんと『BLEACH』の久保帯人さんの対談が収録されています。
そこで芥見さんは、『BLEACH』を大切な出発点として語っています。
小学4年生のときに第1話を読み、漫画家という仕事を初めて意識したというのです。
そのうえで、自分には『HUNTER×HUNTER』や『新世紀エヴァンゲリオン』が加わっていったと説明しています。
冨樫作品は、読者が似ていると感じているだけの存在ではありません。
芥見さん自身が、自分を作った作品として認めているのです。

同じ対談で芥見さんは、『BLEACH』の作家性を分析してまねる難しさも話しています。
長く読み続けたことで無意識に影響が出ても、久保さんならではの表現をそのまま再現することはできないと考えているのです。
この対談を収めた公式ファンブックは、芥見さんの創作の出発点を知る一冊でもあります。
冨樫さんの解説が、ホラー小説を読む入口にもなった
漫画の外にも、冨樫さんの名前が登場する話があります。
「ジャンプホラー小説大賞」のインタビューで、芥見さんはホラーとの出会いを尋ねられました。
当時、芥見さんは読書量の少なさを気にしていたといいます。
そこで友人が貸してくれたのが、平山夢明さんの短編集『他人事』でした。
刺激のあるホラーなら最後まで読める、と勧めた友人は、冨樫さんが解説を書いていることも伝えています。
漫画家として好きだった名前が、小説を手に取る場面にも現れたのです。

『他人事』には、助けを必要とする人に向けられる無関心など、人間の振る舞いから恐怖を描く14の短編が収められています。
冨樫さんが参加しているのは、集英社文庫版の解説です。
漫画には、もっと生かしたいと答えていた
同じインタビューで芥見さんは、好きな本として平山さんの『異常快楽殺人』と、ジャック・ケッチャムの『オフシーズン』を挙げています。
小説の怖さも楽しむ読者になっていたことが分かります。
では、その経験を漫画でどう生かしているのか。
この問いへの答えは、当時はあまり生かせておらず、もっと生かしたい、というものでした。
読んで好きになることと、描く作品に取り込むことの間には、本人が意識していた距離もあったのです。
このやり取りは、芥見さんのホラーインタビューで公開されています。
まとめ
芥見さんが語る創作の出発点には、『HUNTER×HUNTER』だけでなく、『BLEACH』やアニメもあります。
その中で冨樫さんは、漫画を通して影響を与えた作家であり、別の作家の本に出会う場面にも名前があった人です。
好きな漫画から、その作者が解説した小説へと読む世界が広がっていく。
二人の関わりをたどる面白さは、作品同士の似たところに加えて、こうした読者としての歩みも見えてくるところにあります。


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