冨樫義博さんは、幽助やヒソカが髪を下ろす演出について、『湘南爆走族』から影響を受けたと語っています。
少年時代に衝撃を受けた『漂流教室』や、夢中で模写した『北斗の拳』も、本人の読書体験を知るうえで欠かせない作品です。
どの漫画を読んだかだけでなく、その中の何に惹かれたのか。
本人が話した具体例をたどると、冨樫作品の人物が持つ格好よさにも、別の漫画から受け継いだものが見えてきます。
『湘南爆走族』――髪を下ろしたときの格好よさ
2016年の石田スイさんとの対談で、石田さんは中学生の頃、風呂上がりで髪を下ろしたヒソカを初めて模写したと振り返っています。

冨樫さん自身も、普段は上げている髪を下ろす演出が好きでした。
影響を受けたのは、吉田聡さんの『湘南爆走族』です。
リーゼントの主人公が髪を下ろすときの姿に惹かれ、自分の漫画でもやってみたいと思ったといいます。
『幽☆遊☆白書』の幽助にも、この影響があると話しています。
キルアの登場場面には、憧れの作画がある
キルアの見た目についても、冨樫さんは参考にした作品や作家を明かしています。
2023年の『イワクラと吉住の番組』への書面回答では、暗殺一家の子にすると決めた頃に、上條淳士さんや『多重人格探偵サイコ』、黒夢の「少年」が頭に浮かんだと説明しました。
上條さんや、『多重人格探偵サイコ』を描く田島昭宇さんへの憧れは、キルアの登場時の描き方にも関わっています。
体の一部を光で白く飛ばして見せる表現に、その影響があるというのです。
顔つきだけでなく、人物をどう見せて登場させるかにも、好きな作画からの刺激がありました。
『漂流教室』――少年時代に受けた衝撃
冨樫さんの読書体験には、恐怖を描く漫画も登場します。
山形大学の広報誌『みどり樹』2016年春号では、楳図かずおさんの『漂流教室』と、自作の『HUNTER×HUNTER』を手にした冨樫さんの写真が掲載されました。
その写真説明には、『漂流教室』は少年時代に読んで衝撃を受けた漫画だとあります。
同じ取材では、小学校の低学年から、コマを割った漫画形式で絵を描いていたことも紹介されています。
漫画を読む側でも、描く側でもあった少年時代に出会った一作です。
『北斗の拳』――模写して、続きを想像した
『北斗の拳』への思いは、2023年に発売された新装版第5巻の推薦コメントに表れています。
冨樫さんは、読むことにも模写にも夢中になり、続きを思い描いていたと振り返りました。

出版社が公開したコメントでは、その作品があったからこそ現在の自分がいるという感謝も伝えています。
読んだ作品を自分の手で描き、まだない続きを想像するほど夢中になった、その経験の大きさを語る言葉です。
まとめ
幽助やヒソカの格好よさを生んだ、髪を下ろす演出。
その由来を知ると、冨樫さんが好きだった漫画が、自作の人物の魅力にもつながっていたことが分かります。
そして、そのヒソカに惹かれた石田さんも、自分の手で描いてみたくなった。
見慣れた一場面には、作り手が憧れた表現を受け継いでいくつながりもあるのです。


コメント