石動雷十太の飛飯綱は、離れた相手にも傷を負わせる。
剣心もその攻撃を受け、由太郎は右腕に重傷を負った。
それでも剣心は、雷十太の唱える「殺人剣」を否定する。
剣心が見たのは、雷十太の言葉と、その剣で人を傷つけたときの振る舞いの食い違いだった。
飯綱の威力は本物だった
雷十太は古流剣術の復興を唱え、竹刀で競う道場の剣術を見下す。
雷十太が長い修行で身につけた飯綱には、実際に相手を斬る力がある。
雷十太は飛飯綱を立て続けに放ち、剣心を近づけさせない。

これほどの威力があるからこそ、雷十太が飯綱をどう語るかが重要になる。
由太郎を傷つけた剣を、雷十太は「究極」と誇った
飛飯綱は剣心のそばにいた由太郎の右腕も斬った。
剣心は由太郎の治療を優先して、一度戦いを離れる。
雷十太は由太郎の傷を軽く扱い、再戦では剣心に負わせた手傷を喜ぶ。
そして飯綱を真古流の象徴、「究極の殺人剣」と呼ぶ。

由太郎は雷十太を師として慕っていた。
その由太郎を傷つけた後も、雷十太は技の威力に夢中になっている。
剣心は由太郎の負傷と、それを軽く扱う雷十太の態度に怒る。
剣心は「人を斬らなかったこと」を責めているのか
剣心自身は、人を斬らないと決めている。
だから、雷十太がこれまで誰も殺していないことを、悪いこととして責めていると読むと話がねじれる。
剣心は以前から、剣を凶器、剣術を殺人術だと語っていた。
それでも剣心は人を守るために剣を使い、殺さない道を選ぶ。
不殺は、剣の危険を知ったうえでの剣心の選択である。

一方の雷十太は、人を斬る剣を理想として掲げながら、由太郎に負わせた傷を顧みない。
剣心が雷十太に突きつけたのは、殺人の経験が足りないというだけの批判ではない。
命を奪うことを剣術の誇りとして語るなら、その結果を軽く扱うなという批判である。
弥彦を人質にしたとき、言葉と行動が離れた
雷十太は剣心に倒された後、弥彦を人質に取る。
弥彦が斬るなら斬れと挑むと、雷十太は弥彦を斬れない。
雷十太が弥彦を斬らなかったこと自体は、責められることではない。
それまで「殺人剣」を持ち上げて人を傷つけてきた本人が、実際に命を奪う局面では自分の言葉どおりに振る舞えなかった。
雷十太の敗北は、飯綱が偽物だったという証明ではない。
強い技を持っていても、その技で人を斬る意味まで理解したことにはならない。
剣心は人を斬った過去を背負って不殺を選び、雷十太は人を斬る剣を理想に掲げながら、傷つけた由太郎さえ顧みなかった。
二人の差は、殺した人数ではなく、自分の剣が人にもたらすものから目をそらすかどうかにある。


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