宇水は斎藤の心音から、気持ちが高ぶっていることを察した。
しかし、その理由を警官隊の仇討ちだと決めつけ、斎藤に否定される。
聞き取った音は正しいのに、心を読み違えた。
この食い違いが、二人の「心眼」の違いをはっきりさせる。
宇水が聞き取ったこと、決めつけたこと
宇水は志々雄の一派に属し、斎藤の配下の警官たちを殺している。
対峙した斎藤の気持ちが高ぶっていると聞き取り、宇水は斎藤が警官隊の仇を討ちたがっていると考えた。
心音から感情の動きをつかむ宇水の能力は、ここでも働いている。
宇水が間違えたのは、音から分かることと、その音が生じた理由を同じものと考えた点だ。
斎藤は、職務中に死んだ警官たちのために任務を果たそうとは思うが、仇討ちのつもりはないと返す。
斎藤が戦いに高ぶる理由は、自分の正義である「悪・即・斬」を貫くためだ。
亡くなった警官たちを思い、残りの任務を果たすことと、いま宇水を斬ろうとする動機を、斎藤は分けている。

「聞こえる」宇水と、表情から推し量る斎藤
宇水の心眼は、目を失った後に得た異常な聴覚だ。
心音から相手の心理状態を、筋肉や骨の音から攻撃の動きを読む。
その力は斎藤の牙突を防ぐほど鋭い。
だから、斎藤の動機を外したことは、宇水の戦闘能力が偽物だったという意味ではない。

一方、斎藤が「心眼」と呼ぶのは、相手の言動を見て、その裏にある事情を考える洞察だ。
宇水は志々雄に視力を奪われた過去を語るとき、うっすら笑う。
斎藤は、仇を討つつもりでいる者の語り方としてその笑みを不自然に感じ、宇水が復讐を諦めていると見抜く。

宇水は志々雄をいつでも狙ってよいという条件で仲間になったが、実際には再び挑むことを避けていた。
斎藤が暴いたのは、宇水が隠していたその事情だ。
斎藤も笑みだけで結論を出したわけではない。
宇水が志々雄に敗れ、なお志々雄のもとにいるという行動まで合わせて、笑みの意味を考えている。
読み違いが勝負を変えた
宇水は斎藤の高ぶりを正確に聞いた。
斎藤も宇水の笑みを確かに見た。
違いは、そこから相手の考えへ進むときにある。
宇水は「部下を殺された男なら復讐するはずだ」と理由を先に決めた。
斎藤は、復讐を口にしながら志々雄のもとにいる宇水の行動と笑みを結びつけた。
宇水の心眼は、剣を交える相手の動きを読む武器として強かった。
それでも、自分の推測を相手の本心と取り違えたため、斎藤の動機には届かなかった。
そして斎藤に、自分が隠していた復讐の断念を突かれる。
宇水の心眼の限界は、耳の鋭さではなく、聞こえたものに付けた意味にあった。


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