『るろうに剣心・北海道編』阿爛は観柳の金銭観に惹かれながら、なぜ誘いを断ったのか

『るろうに剣心・北海道編』第5巻の表紙。阿爛と剣心が描かれている るろうに剣心
『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚・北海道編―』第5巻/和月伸宏・黒碕薫・集英社

武田観柳は井上阿爛に、金こそ公平だと語る。
生まれ持った髪や肌の色で人を見られてきた阿爛には、聞き流せない話だった。
ところが、観柳が一緒に商売をしようと誘うと、阿爛は断る。
阿爛が選んだのは、金を稼ぐことをやめる道ではない。
明日郎と旭を置いて観柳について行くことを、選ばなかったのである。

観柳の言葉は、阿爛の境遇に届いた

阿爛は、観柳に会う前から金を欲しがっていた。
剣心に仕事を頼まれたときも、働くなら報酬が欲しいと伝えている。
観柳のようになりたいかと剣心に問われても、阿爛はそれを否定したうえで、金は欲しいと言った。
阿爛の金への関心は、観柳に教え込まれたものではない。

その阿爛に、観柳は「金で買えないもの」を挙げる。
才能、家柄、容姿、肌や髪の色。
阿爛は自分の髪と肌の色を思い浮かべる。
観柳の話は、阿爛が自分では選べなかったものにも及んでいた。

観柳の挙げる髪や肌の色に反応する阿爛
『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚・北海道編―』第5巻/和月伸宏・黒碕薫・集英社

観柳は、金で買えないものが差別を生むからこそ、金が最も平等で公平なのだと言う。
金さえ稼げば、生まれつき何も与えられなかった者でも自分の力で上に行ける、というのが観柳の考えだ。
阿爛が耳を傾ける理由は、単に金持ちになりたいからだけではない。
変えられない出自や見た目で人を判断される阿爛に、稼いだ金は自分で手にできる力として映る。

金が公平だと語る観柳と、その話を聞く阿爛
『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚・北海道編―』第5巻/和月伸宏・黒碕薫・集英社

誘いは魅力的でも、条件が合わなかった

阿爛は観柳の商才をただ遠ざけたわけではない。
二人は劍客兵器の本多雨読との戦いでも力を合わせる。
観柳は阿爛を「弟子」と呼び、戦いのあと、共に金を稼いで金で買えるものを手に入れようと誘った。

観柳が阿爛を商売に誘う場面
『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚・北海道編―』第6巻・第三十四幕/和月伸宏・黒碕薫・集英社

観柳は、明日郎と旭には用がないとも言う。
阿爛は誘いを「面白そう」と認めながら、遠慮すると返す。
金を稼ぐ観柳のやり方に興味がないから断ったわけではない。
阿爛は三人で進み、金を儲けて、おいしいものを食べたいと話す。

明日郎と旭と三人で進むと観柳に答える阿爛
『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚・北海道編―』第6巻・第三十四幕/和月伸宏・黒碕薫・集英社

観柳の誘いに乗れば、阿爛は金を稼げるかもしれない。
だが、その誘いには明日郎と旭を置いていくことが含まれていた。
阿爛は金の力を認めたまま、その条件を断った。

観柳が阿爛に示したのは、金で買えるものをすべて手に入れる未来だった。
阿爛が口にしたのは、明日郎と旭と稼ぎ、三人で食べる未来である。
阿爛にとって、一緒にいる二人は、豊かになってから切り離す相手ではなかった。

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