『るろうに剣心』由美はなぜ志々雄に刺されて「嬉しい」と言ったのか

『るろうに剣心』第17巻の公式表紙 るろうに剣心
『るろうに剣心』第17巻/和月伸宏・集英社

志々雄は由美ごと剣心を刺した。
剣心は、志々雄が大切な人を裏切ったと怒る。
ところが由美は「嬉しい」と答えた。
由美が割って入ったときに望んだことと、刺された後に喜んだことは同じではない。
その順序を追うと、由美の言葉の意味が見えてくる。

志々雄のそばにいても、戦いには加われなかった

由美は志々雄のすぐそばにいて、剣心たちを志々雄のもとへ案内した。
志々雄にとって親しい相手であり、ただの傍観者ではない。
それでも剣を持つ十本刀とは違い、由美自身は戦えない。
志々雄の力になりたいのに、剣心と戦う志々雄を直接助ける力はない。
由美はそのことを歯がゆく思っていた。

剣心たちを志々雄のもとへ案内する由美
『るろうに剣心』/和月伸宏・集英社

由美が割って入ったのは、志々雄を守るため

決戦で志々雄の体が限界に近づくと、由美は剣心と志々雄の間に入る。
由美は剣心に戦いを止めてほしいと訴えた。
由美がこの時点で願っていたのは、志々雄の命を守ることだ。
自分を刺すよう志々雄に頼んだ場面ではない。

しかし志々雄は、由美の体を貫いて剣心にも傷を負わせた。
剣心が怒ったのは当然だろう。
剣心には、志々雄が自分を守ろうとした由美を犠牲にしたように見える。
志々雄はそれを「裏切り」と呼ぶ剣心に、自分と由美は互いを理解していると言い返す。

由美を刺した後、剣心へ言い返す志々雄
『るろうに剣心』第17巻/和月伸宏・集英社

「嬉しい」が指すのは、死ではなく戦いの中で果たせた役割

志々雄の言葉だけなら、本当に由美も同じように考えていたのかは分からない。
ここで由美自身が語る。
由美は、志々雄の「一番大事な闘い」で、初めて役に立てたことを喜んだ。

志々雄の戦いで役に立てた喜びを語る由美
『るろうに剣心』第17巻/和月伸宏・集英社

由美が喜んだのは、刺されたこと自体ではない。
そばで支えるだけでは加われなかった志々雄の戦いに、自分も関わることができたと感じたのだ。
だからといって、由美が最初から自分の死を望んでいたことにはならない。
由美は志々雄を助けようとして割って入り、刺された後に、自分の行動が志々雄の攻撃につながったと受け止めた。

剣心は由美を失わせた行為を見て怒り、由美は最後に果たせた役割を見て喜ぶ。
同じ一撃を前に、二人は違うものを見ていた。
由美は戦いを止めようとして剣心の前に立ち、その結果、志々雄の戦いを助けることになった。
由美の「嬉しい」は、志々雄の力になりたいという願いが悲惨な形でかなったことを伝える言葉なのである。

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