『るろうに剣心』赤空は刀を打ち、青空は刀をやめた――父子は何を残したのか

新井青空が名乗る原作場面 るろうに剣心
『るろうに剣心』京都編/和月伸宏・集英社

新井赤空は殺人奇剣を打ち続け、息子の青空は刀を作ることをやめた。
その青空が、父の最後の一振りを剣心へ渡す。
青空は父の仕事を受け入れて、考えを変えたのだろうか。
青空が変えたのは、刀を作らないという方針ではなく、父の刀を誰に託すかという判断だった。

赤空が刀を打ち続けた理由

赤空は人を殺すための奇剣を作り、自分の刀が新しい時代を作ると語った。
青空が父の仕事を嫌ったのは、刀の先で人が死ぬからだ。
二人の対立には、青空が無視できない事実がある。

ただ、赤空自身も殺人奇剣を作ることに迷いがなかったわけではない。
人を斬らずに新時代を生きる道を探すという剣心に、赤空は、そんな道があるなら自分にも教えてほしいと返す。
赤空は刀で戦いを終わらせようとしながら、人を斬らずに済む道を知りたがっていた。

新井赤空が剣心に人を斬らない道を問う原作場面
『るろうに剣心』京都編/和月伸宏・集英社

青空はなぜ刀を作らないのか

青空には、父の刀が人を傷つける道具だったという思いがある。
青空は父と同じ刀工の腕を持ちながら、包丁など暮らしに使う刃物を作る。
刃物を作ることまで捨てたのではない。
自分の腕を、人を斬る刀ではなく、日々の生活に使うと決めたのだ。

剣心が折れた逆刃刀に代わる刀を求めても、青空は新しい刀を打たない。
剣心の事情を聞いた途端に方針を曲げたわけでもなかった。
それだけに、父の遺した刀を後で剣心へ渡す判断には意味がある。

青空は刀だけでなく、持ち主を見た

父の最後の刀を狙った張は、青空の息子・伊織を連れ去る。
剣心は折れた逆刃刀のまま張と戦い、伊織を守ろうとする。
そこで剣心は、時代を作るのは刀ではなく、それを扱う人だと青空に語る。

剣心が刀を扱う人の大切さを青空に語る原作場面
『るろうに剣心』京都編/和月伸宏・集英社

青空は刀そのものを信用したから渡したのではない。
目の前で伊織を守ろうとする剣心を見て、この人になら父の刀を託せると判断した。
刀を作らない決心と、すでにある刀の使い手を選ぶことは、別の選択である。
だから青空は新しい刀を打たずに、父が神社へ納めた刀を剣心へ渡せた。

父が最後に残した刀と、息子の選択

青空は父の最後の一振りを、赤空が深い悔恨とわずかな希望を込めて残した刀だと説明する。
赤空が最後に打ったのは、人を斬らずに戦うための逆刃刀・真打だった。

青空が赤空の悔恨と希望を語る逆刃刀・真打の原作場面
『るろうに剣心』京都編/和月伸宏・集英社

真打には、子に恨まれても孫の世のために刀を鍛えた、という赤空の言葉が刻まれている。
その言葉は、赤空が作った殺人奇剣の危険を消さない。
同時に、青空の次の世代が戦いに頼らず生きる時代を、赤空も願っていたことを示す。

赤空は最後に人を斬らずに戦うための刀を残し、青空はその刀を人を守ろうとする剣心に託した。
青空は父と同じ刀を打つことなく、父の願いを受け取った。
逆刃刀・真打が剣心へ渡るまでには、作った父だけでなく、使う人を見極めた息子の判断が必要だった。

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