『スプリガン』『ARMS』の皆川亮二さんは、1988年に『HEAVEN』でデビューしました。
この短編は『漫画家本vol.2 皆川亮二本』に完全版で再録されています。
作者自身が『HEAVEN』をどう見ているかを知る手がかりが、「背景が主役」という言葉です。

『HEAVEN』の完全版を収めた『皆川亮二本』
再録先は、漫画家を一人ずつ特集する小学館の『漫画家本』シリーズ第2弾です。
表紙にも『HEAVEN』の完全版41ページ収録が掲げられています。
目次には、第22回小学館新人コミック大賞の入選作であることも記されています。
『HEAVEN』を描いたきっかけは、編集者からの誘いでした。
高校の同級生である神崎将臣さんの仕事を手伝っていた皆川さんに、サンデーの編集者が声をかけたのです。
その後、1989年には『スプリガン』の連載が始まります。
この経緯は、皆川さんのデビューから『スプリガン』連載までで詳しく紹介しています。

人物だけでなく、その人物がいる場所を見る
『皆川亮二本』の取材・構成を担当した島田一志さんは、皆川さんが『HEAVEN』を「背景が主役」と説明していたことを、2018年の編集者インタビューで明かしています。
島田さんはアシスタント経験にも触れながら、人物とともに背景もじっくり見てほしいと勧めています。

公開された誌面では、人物の顔や動きに加え、壁や車の線も細かく描かれています。
人物を追うだけでなく、その人物がいる場所にも目を戻してみる。
本人の言葉を知っていると、デビュー作を読む時の注目点が一つ増えます。
壊された建物にも天国がある、という発想
集英社の新人賞インタビューでは、皆川さん自身が『HEAVEN』の着想を説明しています。
描きたかったのは、明治・大正の建物や乗り物でした。
そこから、壊された建物も天国へ行くのではないかと考え、地上にはもうない建物が集まる世界を作ったそうです。
皆川さんは当時、背景を描く仕事を経験していました。
背景で勝負したいという気持ちもあり、描きたいものと描けるものから世界を作り、そこへドラマを加えたと振り返っています。
『HEAVEN』では、背景を描きたいという気持ちが、物語の舞台を考える出発点にもなっていました。
まとめ
『HEAVEN』の建物を見る楽しみは、描き込みの細かさだけにはとどまりません。
作者が描きたかった昔の建物が、天国という舞台を考えるきっかけになっている。
その出発点を知ると、人物の後ろにある景色も、作品を読む楽しみになります。


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