福本伸行が考える「新しい漫画」|日常の実感から、描いたことのない主人公へ

カイジ第1巻を手にする福本伸行。2023年の本人取材写真 漫画家・作者
モーニング40周年インタビュー(2023年)。撮影:柏原力/講談社。

福本伸行さんは、漫画の面白さを、新しさだと考えています。
その新しさには、誰も思いつかなかった世界だけでなく、自分の内側から出てくる日常の小さな実感も含まれます。
『アカギ』の続きを描く道があっても、別の主人公を描く。
本人の言葉と新作を選んだ経緯から、福本さんが新しい漫画に求めるものをたどります。

日常の小さな実感も、他の人には新しい

福本さんは2023年の『モーニング』40周年インタビューで、「面白いって、何?」への答えは、20代の頃から新しいことだと話しています。
まったく新しい世界を描くことも、日常の些細なことを描くことも、その中に入ります。
自分の内側から本当に出てきたことなら、他の人はまだ知らない。
だから、他の人にとって新しい表現になるという考えです。

カイジ第1巻を手にする福本伸行。2023年の本人取材写真
福本伸行、2023年『モーニング』40周年インタビュー/撮影・柏原力。 出典

福本さんは、物語の大筋に加え、小さな台詞や表現にも、自分が面白いと思うものを入れると説明しています。
大きな勝負が終わるまでにも、言葉遊びや人物のやり取りを楽しめる。
福本さんの台詞作りには、その細部への関心も表れています。

『アカギ』の続きを選ばず、『マミヤ』を始めた

2025年の『大カイジ展』での本人インタビューでは、竹書房から次の連載を依頼されたときの判断を話しています。
福本さんは、27歳のアカギの話を続ければ本は売れると考えていました。
そのうえで、一度きれいに終わらせた漫画もあったほうがよいと考えました。
そして、女の子を主人公にしたことがなかったので、『闇麻のマミヤ』に挑戦したといいます。

福本伸行の闇麻のマミヤ第1巻。ピンクの上着のマミヤと麻雀卓
福本伸行『闇麻のマミヤ』第1巻、電子版書影/フクモトプロダクション。 出典

『マミヤ』は、麻雀で揉め事を解決する少女を主人公にした作品です。
福本さんは、麻雀漫画で、これまで描かなかった主人公を選んだのです。
新作を選んだ理由には、描きたいことに挑戦せずに人生を終えるのはもったいない、という福本さんの思いがありました。

思いついた『二階堂地獄ゴルフ』を、後回しにしなかった

同じ2025年の取材では、『二階堂地獄ゴルフ』を始めた事情にも触れています。
『カイジ』を描き終えてからでは、かなり時間が経ってしまう。
福本さんは、まだ誰もこのアイデアで描いていないのだから、やるしかないと考えました。

福本伸行の二階堂地獄ゴルフ第1巻。ゴルフバッグを背負う二階堂進
福本伸行『二階堂地獄ゴルフ』第1巻、2023年刊/講談社。 出典

第1巻で登場する二階堂進は、10年連続でプロテストに落ちている35歳の男です。
福本さんは、プロを目指す人がどう生きているかを説明しなければ、二階堂の人生は描けないと話しています。
新しいことを始めるには、その人物が生きる世界を読者に伝える仕事も生まれます。
新連載では、連載を続けるときよりも、最初に多くのことを考えなければならないという説明にも、その難しさが表れています。

まとめ

『アカギ』を読んだ人が、今度はマミヤの勝負を読む。
『カイジ』で福本さんを知った人が、二階堂のプロへの挑戦を読む。
作者が描きたい新しい人物を選ぶことは、読者にとっても、代表作とは違う福本漫画へ進む楽しみにつながります。
勝負の仕掛けだけでなく、そこで誰が何に悩むのかに目を向けると、新作ごとの違いも味わえます。

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