藤崎竜の漫画を初めて読むなら、まず『封神演義』が入口になる。
中国古典を大胆に組み替えた冒険には、奇抜な人物の姿も、軽快な掛け合いも、壮大な物語もある。
その一作を気に入った後は、初期SFへ戻るか、小説の漫画化へ進むかで、次の楽しみ方が変わる。
『封神演義』は1996年に始まった二度目の連載だ。
藤崎はその前にもSFを描き、後には『屍鬼』『銀河英雄伝説』を漫画にしている。
作品歴をたどると、原作のある漫画と、自分で物語を作る漫画の両方を描いてきたことが分かる。
まず『封神演義』、作品歴を追うなら初期作から

『封神演義』で太公望が託されるのは、人間界に災いをもたらす仙人たちを封じる計画だ。
太公望と仲間たちの旅は、やがて世界の成り立ちに関わる物語へ広がる。
藤崎は田中芳樹との対談で、中国古典をジャンプ漫画に変えることを、この漫画化のテーマにしたと語っている。
古典に詳しくなくても、太公望たちの冒険から入ればよい。
作品を発表した順に追いたい場合は、次の流れになる。
短編集も含めた主な作品の順番であり、文庫版や電子版の発売順ではない。
『WORLDS』『PSYCHO+』で初期SFへ戻る

『WORLDS』は、短い作品から藤崎の発想に触れたい時に手に取りやすい。
表題作では、事故に遭った少年が、自分の知る世界によく似た、犯罪の多い平行世界へ入り込む。
現実と夢のどちらを選ぶのかという話をはじめ、短編集には五作品が収められている。

初連載の『PSYCHO+』では、ゲーム好きの少年が手に入れた謎のゲームから、地球の存亡に関わる秘密へ話が広がる。
1992年に始まった連載は、文庫版『藤崎竜作品集 1 サイコプラス』でも読める。
『封神演義』より前の藤崎を知りたいなら、この二作が入口になる。
『サクラテツ対話篇』『WaqWaq』で別の発想を楽しむ

『封神演義』の次の連載『サクラテツ対話篇』では、主人公が守ろうとするのは自分の家だ。
その土地を狙って、未来や宇宙、地底、魔界、さらには漫画の外からまで侵略者が現れる。
壮大な計画を任された太公望とは、主人公が置かれる状況から違う。
奇妙な侵略者が次々に入り込む話を読みたいなら、こちらへ進める。

『WaqWaq―ワークワーク―』では、機械に襲われる人間たちが、赤い血を持つ神の救いを待っている。
そこへ赤い血の少女が現れ、機械と戦う防人の息子シオと出会う。
人間、機械、神という異なる存在を組み合わせた世界を読みたい人には、このSFファンタジーが次の候補になる。
『屍鬼』へ進み、再び独自の物語へ

『屍鬼』は、小野不由美のホラー小説の漫画化だ。
山に囲まれた外場村で、不可解な死が続く。
藤崎がテーマにしたのは、その外場村をリアルに作り出すことだった。
当時の担当編集・嶋智之は、漫画版では群像劇である小説から主要人物へより焦点を当てていると説明している。
原作者が漫画化を許可した時の条件も、原作をなぞるだけの作品にしないことだった。
小説を知っている人にも、人物をどう見せる漫画になっているかという楽しみがある。

その後の『かくりよものがたり』は、再び藤崎自身の物語だ。
荒ぶる魂を鎮めるアメ姫と、命を賭けて彼女を守るサルタヒコを描く。
『屍鬼』の後も小説の漫画化だけが続いたわけではなく、人と霊の世界を舞台にした独自の連載を挟んでいる。
『銀河英雄伝説』は、憧れのSFを大河ドラマに

『銀河英雄伝説』は、藤崎が高校時代から好きだった田中芳樹の小説だ。
藤崎は海外SFを読んでいた頃、日本のSFも探す中でこの作品に出会った。
藤崎は、ヤンと太公望の奇策について尋ねられ、その影響も認めている。
『銀河英雄伝説』の漫画を描くより前に、その小説は『封神演義』の創作にも関わっていた。
漫画化では、大河ドラマをテーマに、ラインハルトの子供時代から物語を始めた。
小説と同じ会戦から始めるネームも一度描いたが、その構成を考え直している。
子供時代から描く方が分かりやすいという狙いも、藤崎自身が語っている。
藤崎版は2026年2月に連載を終え、3月に最終35巻が発売された。
これから読む人は、完結した長編として最後まで追える。
まとめ
『封神演義』を入口にすると、初期SFにも、ホラーにも、宇宙の大河ドラマにも次の一冊が見つかる。
作品歴をたどる読み方と、今読みたいジャンルを選ぶ読み方の、どちらからでも始められる。
中国古典をジャンプ漫画へ変え、ホラー小説では村をリアルに描き、宇宙の小説では人物の幼年期から始める。
原作付きの作品を選んでも、一作ごとに藤崎が漫画にしようとしたものは違っている。
次に読む作品では、題材と一緒に、その漫画の始め方や人物の見せ方にも目を向けてみたい。

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