『封神演義』完全版の表紙は何が違う?藤崎竜の描き下ろしと文庫版

黄色い服の太公望の上半身を大きく配置した集英社文庫版封神演義第1巻の書影 漫画家・作者
集英社文庫版『封神演義』第1巻の書影/藤崎竜、集英社。

『封神演義』完全版の表紙は、全18巻のために藤崎竜さんが描き下ろしたイラストです。
横に並べると絵がつながる仕掛けがあり、後に出た文庫版にも、このイラストが使われています。
連載当時の単行本と比べると、太公望の姿も、表紙の中に広がる景色も変わっています。

『封神演義』の連載は2000年に終わり、完全版の刊行は2005年に始まりました。
物語をもう一度まとめた本には、連載が終わった後に描く、新しい表紙の楽しみも加わったのです。

同じ太公望でも、全身の動きと霊獣に乗る姿は違う

頭を下にして脚を曲げた太公望を描く封神演義第1巻のデジタル版書影
通常版第1巻のイラストを使ったデジタル版書影/藤崎竜、集英社。 出典

連載当時の単行本第1巻のイラストでは、太公望が頭を下にした姿勢で描かれています。
大きく曲げた脚と、宙を流れる黄色い帯が、白い背景に浮かびます。
頭から足先までを一度に見せる、動きのある全身像です。

四不象に乗る太公望と青緑色の山々を描く完全版第1巻表紙イラストのポスター商品見本
完全版第1巻表紙イラストを使ったA3マット加工ポスターの商品見本/安能務・藤崎竜、集英社、AMNIBUS。 出典

完全版第1巻のイラストでは、太公望は四不象に乗り、顔をこちらへ向けて腕を上げています。
青緑色の空、霧、そびえる山が周囲に描かれ、人物と霊獣の周囲まで景色が広がっています。
服や四不象の体には、明るい部分と暗い部分が細かく描き分けられています。
同じ黄色を使っていても、通常版の帯と、完全版の服では、見える形や色の広がりが違います。

完全版は、昔の第1巻の絵を大きく載せた表紙ではありません。
太公望を、もう一つの姿と景色で描いたカラーイラストになっています。

全18巻を横につなげる、表紙の楽しみ

通常の単行本は全23巻、完全版は全18巻です。
完全版はA5判になり、連載時のカラーページも再現されています。
表紙も全巻を横に並べるとつながるように作られていて、一冊の人物を眺める楽しみが、巻を集めて絵を広げる楽しみへ続きます。

白い髪の伏羲が両手を広げる完全版第18巻表紙イラストのキャンバスボード商品見本
完全版第18巻表紙イラストを使った伏羲のキャンバスボードの商品見本/安能務・藤崎竜、集英社、AMNIBUS。 出典

最終18巻の表紙を飾るのは伏羲です。
曲がりくねる装飾を身につけ、両手を大きく広げる姿が描かれています。
第1巻と同じ青緑色の景色に、黄色い服と白い髪が重なります。
一冊ずつ見る時にも、人物の形、衣装、背景の色を一緒に楽しめます。

完全版のイラストは、太公望と四不象のクリアファイルや、伏羲のキャンバスボードにも使われています。
物語を収める本の表紙から、その絵を飾る品にもなっているのです。

文庫版は、完全版の絵を違う配置で見せる

黄色い服の太公望の上半身を大きく配置した集英社文庫版封神演義第1巻の書影
集英社文庫版『封神演義』第1巻の書影/藤崎竜、集英社。 出典

2015年に刊行が始まった集英社文庫版は、全12巻です。
表紙には完全版のイラストを使っていますが、第1巻を見ると、太公望の上半身が大きく配置されています。
霊獣と山を含めて描かれた一枚絵の中から、今度は人物の顔や服が近くに見える表紙になっています。

通常版、完全版、文庫版は、巻数だけでなく表紙の見せ方も違います。
文庫版の太公望を先に見ていた人も、完全版の第1巻イラストへ目を移すと、その姿の周りに四不象と景色があったことが分かります。

ゲームの色づくりでも参考になった完全版

表紙のカラーは、漫画を読む時だけに使われているわけではありません。
2027年発売予定のゲーム『封神演義 逆命承天』でも、完全版の表紙が色を考える際の参考になっています。

封神演義 逆命承天の会話画面。桃辰と朱雀童子、楊戩が登場し、服や髪に線の描写がある
『封神演義 逆命承天』開発中の会話画面。ゲームは2027年発売予定/安能務・藤崎竜、集英社、SHUEISHA GAMES、LASTWONDER。 出典

2026年の開発者インタビューで、プロデューサーの砂川和紀さんは、完全版の表紙を参考にしていると説明しています。
ディレクターの浅野祥さんも、漫画原稿とカラー原稿では特徴が違うことに触れています。
開発側は、白黒の漫画と、表紙のカラーの両方を調べながら、ゲームの画面を作っています。

線の強弱や、斜線で表す影を開発側がどう捉えたかは、藤崎竜さんの画風の特徴で紹介しています。

まとめ

第1巻で比べると、通常版の太公望は全身の動きで目を引き、完全版では四不象や景色と一緒に姿を楽しめます。
文庫版は、同じイラストの人物を大きく見せています。
同じ物語を収める本でも、どの姿を表に見せるかで、手に取る時の楽しみが変わります。
本編を読み返す前に、見慣れた人物の別の姿を眺められることも、版を比べる面白さです。

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