森山大輔さんは、『クロノクルセイド』『ワールドエンブリオ』を描いた漫画家です。
ヨコオタロウさん原作の『君死ニタマフ事ナカレ』では作画を、TYPE-MOON原作の『Fate/stay night[Unlimited Blade Works]』では漫画化を担当しています。
自分の物語を描く仕事と、ほかの作り手の物語を漫画にする仕事が、作品歴の中に並んでいます。
この違いは、著者名を整理するだけの話ではありません。
『君死ニタマフ事ナカレ』では、森山さんの描いた表情を見た原作者が、人物の今後を変えたこともありました。
代表作と共同制作のやり取りをたどると、作品ごとに違う森山さんの関わり方が見えてきます。
『クロノクルセイド』と『ワールドエンブリオ』――自作の長編
『クロノクルセイド』は、シスターのロゼットとクロノが、悪魔や怪現象に立ち向かう作品です。
旧版の第1巻は1999年に刊行され、2010年には少年画報社から新装版が出ています。

続く『ワールドエンブリオ』は、失踪した天音を探す少年・天海陸が、怪事件に巻き込まれるSF作品です。
『ヤングキングアワーズ』で2005年から2014年まで連載され、第1巻は2006年に刊行されました。
悪魔祓いをする二人の物語から、現代の少年が謎を追う物語へと、森山さんは舞台と主人公を変えて長編を描いています。

森山さんの仕事は、長編漫画だけではありません。
2012年の画集『CHRONICLE』には、この二つの代表作に加え、『妄想奇行』や小説の挿絵、当時未公開だった『Fate』のイラストなども収録されています。
後に漫画化を担当する『Fate』との接点は、2022年の単行本刊行より前からあります。

『君死ニタマフ事ナカレ』――原作者に絵を返す共同制作
『君死ニタマフ事ナカレ』は、超能力を軍事利用するため、少年少女を戦場へ送り出す物語です。
原作はヨコオタロウさん、作画は森山さん。
制服デザイン原案には倉花千夏さん、衣装・武器デザイン協力には三輪士郎さんの名前もあります。
『ドラッグ オン ドラグーン』や『ニーア』を手がけたヨコオさんとの作品ですが、これらのゲームをそのまま漫画化した作品ではありません。
2015年の原作者同士の対談で、ヨコオさんは、編集者から紹介された作画の候補の中から森山さんを選んだと話しています。
二人の間では、原作を渡す形式にも工夫がありました。
最初にシナリオを渡したときは、1話に入れるには文字が多すぎたため、ヨコオさんはコマの枠や吹き出しを置き、絵の説明を文字で書いたネームを用意するようになったのです。
ヨコオさんによると、森山さんは原作の過激な展開に意見を返していました。
主人公クロイについても、森山さんはよい絵をそっと差し込み、原作のひどさをたしなめたとヨコオさんは語っています。

絵が、その後の物語へ影響した例もあります。
ヨコオさんは、ミズカキという人物のよい表情を見て、生き残らせることにしたと同じ対談の続きで説明しています。
原作者が決めたものを絵にするだけでなく、森山さんが描いたものを原作者が受け取り、さらに先の展開へ返していく。
この往復があるところに、二人の共同制作の面白さがあります。
『Mourning Bride』――共同制作の後にもある自作
原作付きの仕事が増えても、森山さんの自作がなくなったわけではありません。
『少年マガジンエッジ』では、2017年から『Mourning Bride』を発表しています。
亡くなったドンの遺言は、四兄弟が週に一度そろって朝食を取ること。
そこへ、ドンの花嫁を名乗る喪服の少女マリカが現れ、遺産と後継者の座を巡るゲームが始まります。

家族の食卓と遺産争いを組み合わせたこの作品は、森山さんを著者として刊行されています。
『君死ニタマフ事ナカレ』に取り組みながら、家族と遺産争いの物語も自作する。
森山さんの作品歴では、自作の長編と共同制作が、このように並んでいます。
『Fate/stay night[Unlimited Blade Works]』――既存の物語を漫画にする
森山さんの『Fate/stay night[Unlimited Blade Works]』は、TYPE-MOONを原作とする漫画です。
遠坂凛のルートを漫画化し、第1巻は2022年に刊行されました。
2026年3月には第8巻も発売されています。

『君死ニタマフ事ナカレ』が、ヨコオさんと新しい漫画を作る仕事だったのに対し、こちらはすでにある物語を漫画として描く仕事です。
第2巻には、巻末のおまけ漫画「とおさかべ」も収録されています。
原作の物語を追う本編と、遠坂凛や刑部姫が登場するおまけ漫画という、違う楽しみ方も用意されています。
『クロノクルセイド』から森山さんを知った人と、『Fate』の漫画から知った人では、最初に触れる仕事が違います。
自作の長編を読みたいなら『ワールドエンブリオ』へ、原作者とのやり取りに興味があるなら『君死ニタマフ事ナカレ』へ。
担当した役割を知ることで、次に読む作品も選びやすくなります。
まとめ
森山大輔さんの作品歴には、自分で物語を描く仕事と、ほかの作り手と物語を形にする仕事があります。
『君死ニタマフ事ナカレ』で原作者が受け取った表情のように、絵が物語の先を動かすこともありました。
作品を選ぶときに「誰の原作か」と「森山さんがどう関わるか」の両方を見ると、同じ漫画家の別の作品へ進む楽しみが増します。

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