『カイジ』は24億円を手にしても、なぜ自由になれないのか?

『賭博堕天録カイジ 24億脱出編』第1巻の表紙 カイジ
画像出典:『賭博堕天録カイジ 24億脱出編』/福本伸行・講談社

24億円あれば、もう働かなくても暮らせそうだ。
だが和也との勝負に勝ったカイジが始めたのは、豪遊ではなく逃亡だった。
札束を運ぶ車が要り、金を隠す場所が要り、銀行に預けようとすれば身分証明書がない。
大金を持っているのに、カイジは自分の家へ帰ることさえ難しい。
勝負には勝ったのに、なぜ金を自由に使えないのか。

勝ち金を持って出るまでが、まだ勝負だった

カイジは和也とのワン・ポーカーに勝ち、24億円を手にした。
しかし和也は帝愛グループ会長の息子であり、帝愛はカイジたちを追い始める。
勝負の場で決まった金額と、その金を持ったまま帝愛から離れられるかは別の問題だ。
カイジたちは、勝った側なのに、賞金を抱えて急いで逃げなければならない。

荷台の金を落とせば巨額を失うと考えるカイジ
『賭博堕天録カイジ 24億脱出編』/福本伸行・講談社

しかも24億円は、数字だけではない。
札束を積んだ車で走る以上、車を失えば金も失い、車を調べられれば中身が見つかる。
カイジは追手の動きだけでなく、運転や荷台の金にも気を配る。
カード一枚を手元で守る勝負から、大量の現金を運び続ける勝負へ変わったのだ。

追手から逃げる車内で運転を急がせるカイジ
『賭博堕天録カイジ 24億脱出編』/福本伸行・講談社

大量の現金は、持っているだけでも行動を狭める

金を持ったまま移動し続ければ、人目を避ける必要がある。
では安全な場所に置けばよいかというと、今度は金から離れる怖さが生まれる。
ホテルへ移る相談で、カイジは現金を一時的にコインロッカーへ預ける段取りを考える。
マリオは手元の大金と離れることに強く抵抗する。
追手に奪われる危険がある一方、預けた先で何か起きるかもしれない。
どちらを選んでも、金の置き場所を気にせず過ごすことはできない。

現金から離れることに抵抗するマリオ
『賭博堕天録カイジ 24億脱出編』/福本伸行・講談社

この不自由は、賞金が少ないせいではない。
むしろ賞金が大きすぎるために、普通の荷物のようには運べず、置いて出かけることも怖くなる。
勝ち金が増えた分だけ、三人の行動には新しい制約が付いた。

銀行へ預けるには、カイジ本人を証明しなければならない

現金を銀行口座に預ければ、重い札束を持ち歩く問題は軽くなる。
カイジたちもその方法を考えるが、そこでカイジは身分証明書を持っていないと気づく。
目の前には24億円がある。
それでも口座を作るために必要なものは、金の額では代わりがきかない。

銀行に預けるための身分証明書を持っていないと気づくカイジ
『賭博堕天録カイジ 24億脱出編』/福本伸行・講談社

カイジは保険証を手に入れるため、母親のいる実家へ行くと決める。
だが実家は帝愛に知られている場所でもある。
金を安全に預ける準備をするだけで、追手に見つかりかねない場所へ戻らなければならない。
昔なら何でもない帰省が、逃亡中のカイジには危険な行動になる。

母親から保険証を受け取るため実家へ向かうと決めるカイジ
『賭博堕天録カイジ 24億脱出編』/福本伸行・講談社

自由とは、勝ち金を使って暮らせること

カイジにとって勝負が終わるのは、チャンとマリオも取り分を持って無事に国へ帰れる時だ。
三人が金を抱えて逃げている間は、24億円があっても行きたい場所へ行き、会いたい人に会い、落ち着いて暮らすことはできない。
カイジ自身が保険証のために実家へ帰る場面は、その隔たりをよく示している。
母親と会うという日常の行動にさえ、逃亡の計画が必要なのだ。

『24億脱出編』では、金を稼ぐ難しさより、手にした金を自分たちの生活へ持ち込む難しさが前に出る。
ワン・ポーカーの勝利は消えていない。
ただ、札束を車に積み、預け先を探し、身分証を取りに戻る三人を見ると、勝った瞬間と自由になれる瞬間の間には、思いのほか長い道がある。

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