『カイジ』はなぜモネとの近所付き合いに苦戦したのか

カイジたちを危険な組織の一員だと疑って怒るモネ カイジ
画像出典:『賭博堕天録カイジ 24億脱出編』/福本伸行・講談社

帝愛の追跡をかわし、ようやく家を得たカイジ、チャン、マリオ。
三人の前に現れた厄介な相手は、向かいに住むモネだった。
モネは帝愛の手先ではない。
だからこそ、追っ手をまくための方法が通じない。
カイジたちは目立たずに暮らしたいが、モネには見知らぬ隣人が何者なのかを確かめたい理由がある。
挨拶がなければ疑われ、説明を始めれば隠していた生活まで見られる。
このすれ違いが、モネを警察へ向かわせた。

近所では、挨拶のなさが怪しさになる

モネが最初に腹を立てたのは、引っ越してきた三人が挨拶に来ないことだった。
向かいの表札を見つけ、カイジたちへ声をかける。
モネにとっては、ごく普通の近所の付き合いを求めたつもりだ。

向かいの家の表札を見て三人に挨拶を求めるモネ
『賭博堕天録カイジ 24億脱出編』/福本伸行・講談社

カイジたちにとって、誰にどんな名前を名乗るかは逃亡の問題になる。
モネが見た表札の「伊藤」と、三人が用意していた名乗りは、近所から見ればすっきりしない。
本人たちも表札をどうするか相談するほど、そこには注意を払っていた。

表札に書く名前を相談するカイジたち
『賭博堕天録カイジ 24億脱出編』/福本伸行・講談社

モネはさらに、三人の暮らしぶりを疑い、危険な組織ではないかと考える。
その疑いは行き過ぎているが、挨拶も説明もない家を毎日向かいから見ているのはモネだ。
カイジたちは彼女の視線そのものから逃げられない。

カイジたちを危険な組織だと疑うモネ
『賭博堕天録カイジ 24億脱出編』/福本伸行・講談社

警察が帰っても、モネの疑いは残る

モネの通報で警察が来る。
警察犬まで入れて調べても、モネが疑ったものは見つからない。
カイジたちはその場を切り抜けるが、これで向かいの家との関係が片づいたわけではなかった。

警察犬を伴う確認を受けるカイジたち
『賭博堕天録カイジ 24億脱出編』/福本伸行・講談社

帝愛の追っ手なら、その場から離れるか、見つからないように動けばよい。
モネは向かいに住み続ける。
警察が何も発見しなかったことと、モネが三人を信用することは別だ。
現にカイジは、今後も近所から疑われることを気にしている。
三人がこの家で暮らすには、モネとの会話を避け続けるわけにはいかなくなった。

手土産が失敗して、初めて見えたモネの事情

カイジは謝りに行くため、菓子折りを選ぶ。
近所への挨拶としては自然な手だが、三人はモネ個人についてほとんど知らない。

モネへの手土産に菓子折りを考えるカイジ
『賭博堕天録カイジ 24億脱出編』/福本伸行・講談社

贈った羊羹を見て、モネは怒る。
亡き夫が同じ羊羹を持ってきたことを、モネは思い出したのだ。
カイジには丁寧な手土産でも、モネには悪い思い出を呼び起こす品だった。

羊羹を見て亡き夫のことを思い出し、怒るモネ
『賭博堕天録カイジ 24億脱出編』/福本伸行・講談社
羊羹を食べる亡き夫を思い出すモネ
『賭博堕天録カイジ 24億脱出編』/福本伸行・講談社

ところが、モネはそこで三人との関わりを断たない。
カイジたちの姿を夫の記憶に重ね、家に入れて話を聞く。
用意した手土産が、カイジの予想どおりに好意を得たわけではない。
カイジの思惑と違うところで、モネ自身の記憶が動いた。
三人にとって面倒だった彼女の個人的な関心が、ようやく会話の入口にもなった。

カイジたちを自宅に上げて話を聞くモネ
『賭博堕天録カイジ 24億脱出編』/福本伸行・講談社

話を聞いてもらうことと、信用されることは違う

モネは三人が危険な組織ではないかと、家の中でも問い続ける。
カイジたちが否定すると、今度はたくさんのキャッシュカードや、追われる理由の説明が必要になる。

三人が危険な組織だという疑いを否定する場面
『賭博堕天録カイジ 24億脱出編』/福本伸行・講談社

カイジたちは、カードは仲間が給料を預けるために用意したのだと説明する。
モネは、人のカードを使うことに疑問を示す。
三人は本当の事情をすべて明かしているわけではなく、モネも何を言われても信じる人ではない。

多くのキャッシュカードについて説明するカイジたち
『賭博堕天録カイジ 24億脱出編』/福本伸行・講談社
カードの扱いを問い直すモネ
『賭博堕天録カイジ 24億脱出編』/福本伸行・講談社

それでもカイジは、帝愛らしき者が近所で聞き込みを始めたら知らせてほしいと頼む。
この頼みは、近所をよく見ているモネだからこそできる。
同じ目が、警察を呼ぶことも、三人に危険を知らせることもありうる。

追っ手の聞き込みを知らせてほしいと頼むカイジ
『賭博堕天録カイジ 24億脱出編』/福本伸行・講談社

まとめ

追っ手を避けるために隠したい事情が、近所で暮らすには不自然に映る。
モネの疑いと向き合うため、三人のほうから声をかけ、何を聞かれているのかを知る必要があった。
羊羹をめぐる思いがけないやり取りを経て、モネは三人の話を聞いた。
その時点で信用が完成したわけではないが、一方的に見張られるだけだった関係は、互いに問い、答える関係へ変わっている。

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