24億円あれば、もう働かなくても暮らせそうだ。
だが和也との勝負に勝ったカイジが始めたのは、豪遊ではなく逃亡だった。
札束を運ぶ車が要り、金を隠す場所が要り、銀行に預けようとすれば身分証明書がない。
大金を持っているのに、カイジは自分の家へ帰ることさえ難しい。
勝負には勝ったのに、なぜ金を自由に使えないのか。
勝ち金を持って出るまでが、まだ勝負だった
カイジは和也とのワン・ポーカーに勝ち、24億円を手にした。
しかし和也は帝愛グループ会長の息子であり、帝愛はカイジたちを追い始める。
勝負の場で決まった金額と、その金を持ったまま帝愛から離れられるかは別の問題だ。
カイジたちは、勝った側なのに、賞金を抱えて急いで逃げなければならない。

しかも24億円は、数字だけではない。
札束を積んだ車で走る以上、車を失えば金も失い、車を調べられれば中身が見つかる。
カイジは追手の動きだけでなく、運転や荷台の金にも気を配る。
カード一枚を手元で守る勝負から、大量の現金を運び続ける勝負へ変わったのだ。

大量の現金は、持っているだけでも行動を狭める
金を持ったまま移動し続ければ、人目を避ける必要がある。
では安全な場所に置けばよいかというと、今度は金から離れる怖さが生まれる。
ホテルへ移る相談で、カイジは現金を一時的にコインロッカーへ預ける段取りを考える。
マリオは手元の大金と離れることに強く抵抗する。
追手に奪われる危険がある一方、預けた先で何か起きるかもしれない。
どちらを選んでも、金の置き場所を気にせず過ごすことはできない。

この不自由は、賞金が少ないせいではない。
むしろ賞金が大きすぎるために、普通の荷物のようには運べず、置いて出かけることも怖くなる。
勝ち金が増えた分だけ、三人の行動には新しい制約が付いた。
銀行へ預けるには、カイジ本人を証明しなければならない
現金を銀行口座に預ければ、重い札束を持ち歩く問題は軽くなる。
カイジたちもその方法を考えるが、そこでカイジは身分証明書を持っていないと気づく。
目の前には24億円がある。
それでも口座を作るために必要なものは、金の額では代わりがきかない。

カイジは保険証を手に入れるため、母親のいる実家へ行くと決める。
だが実家は帝愛に知られている場所でもある。
金を安全に預ける準備をするだけで、追手に見つかりかねない場所へ戻らなければならない。
昔なら何でもない帰省が、逃亡中のカイジには危険な行動になる。

自由とは、勝ち金を使って暮らせること
カイジにとって勝負が終わるのは、チャンとマリオも取り分を持って無事に国へ帰れる時だ。
三人が金を抱えて逃げている間は、24億円があっても行きたい場所へ行き、会いたい人に会い、落ち着いて暮らすことはできない。
カイジ自身が保険証のために実家へ帰る場面は、その隔たりをよく示している。
母親と会うという日常の行動にさえ、逃亡の計画が必要なのだ。
『24億脱出編』では、金を稼ぐ難しさより、手にした金を自分たちの生活へ持ち込む難しさが前に出る。
ワン・ポーカーの勝利は消えていない。
ただ、札束を車に積み、預け先を探し、身分証を取りに戻る三人を見ると、勝った瞬間と自由になれる瞬間の間には、思いのほか長い道がある。


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