森山大輔の表情作画――『クロノクルセイド』の笑い顔と真剣な顔

ロゼットとクロノを描いたクロノクルセイド新装版第1巻の表紙 森山大輔
『クロノクルセイド』新装版第1巻/森山大輔、少年画報社。

『クロノクルセイド』では、ロゼットとクロノの顔が、会話の調子に合わせて大きく変わります。
森山大輔さんは、目と口の形、頬の線、顔を見せる角度を変え、騒がしいやり取りと静かな会話を描き分けています。
第1巻の冒頭には、大きく崩した顔と、細かく描いた顔が何度も入れ替わる場面があります。
ロゼットとクロノの顔を見比べながら、その変化を見ていきましょう。

ロゼットの大きな口と、クロノの引きつった顔

港で車が壊れると、ロゼットは、壊れた車を気にするクロノを叱り、周囲に人がいたことに気づいて笑顔を見せます。
右のページでは、ロゼットが口を大きく開いて怒鳴り、その後は両手を上げて笑います。
ロゼットの笑顔の下では、クロノが口を横へ引き、頬に線を付けたまま、車のそばにいます。

車のそばで引きつった顔をするクロノと笑うロゼット、二人が名乗る場面
『クロノクルセイド』新装版第1巻/森山大輔、少年画報社。 出典

左のページでも、ロゼットがクロノの頭を押さえて笑うコマから、二人が名乗る大きなコマへ続きます。
大きな口と頬の線を強調した顔から、目や髪を細かく描く顔へ戻るので、自己紹介の姿も印象に残ります。
二人の顔は、会話の内容だけでなく、やり取りの調子まで伝えています。

銃を向ける顔から、大きく驚く顔へ

船内で悪魔に銃を向けるロゼットには、眉を寄せ、歯を見せる横顔が描かれています。
その後、クロノに呼ばれて振り向くと、顔の形が大きく変わります。
左のページの上では、目を丸くし、口を大きく開け、頬にも線を重ねています。

悪魔に銃を向けるロゼットと、クロノに呼ばれて驚く顔
『クロノクルセイド』新装版第1巻/森山大輔、少年画報社。 出典

さらに船が自由の女神像へ向かっていると分かると、ロゼットは再び大きな口で叫びます。
その下の小さなコマでは、クロノの目や口が簡単な線になっています。
大声を出すロゼットの顔と、クロノの小さな顔を並べ、危機の中にも二人らしい掛け合いを入れています。

体の姿勢やコマのつながりは、ロゼットの動きを追う記事でも見ています。
同じ船内の場面を、顔と体の両方から眺めることができます。

神像を見つめるときは、顔の変化が小さくなる

港の事件が終わると、ロゼットとクロノは、悪魔の正体とみられる金の神像について話します。
ロゼットは神像に取り込まれかけたときを思い返し、気の毒だったと話します。
ここでは、大きな叫び顔に代わって、神像を見る横顔が描かれています。

金の神像について話すロゼットの横顔と、返事をするクロノ
『クロノクルセイド』新装版第1巻/森山大輔、少年画報社。 出典

右のページでは、目の向きと、小さく開いた口が見えます。
左のページで封印を緩める話をするときには、顔の上半分を見せず、口元と手元を別々のコマに収めています。
大きく開いた口を見せる叫び顔とは、顔の見せ方が変わっています。

クロノは、小さく笑って返事をします。
港での引きつった顔とは、眉と口の形が違います。
同じ二人の会話でも、神像を故郷へ返そうとする話では、顔の動きが小さく描かれています。

試作品を撃つ前の笑顔と、撃った後の驚き

試射の会話でも、ロゼットの表情は、銃を扱うときと相手の言葉に反応するときで変わります。
人物の顔を見ることで、道具の説明と掛け合いを一緒に追える場面です。

試作品を撃ちたいロゼットの笑顔と、止めようとするクロノ
『クロノクルセイド』新装版第1巻/森山大輔、少年画報社。 出典
試作品発射の爆発と、驚くクロノや周囲の人物
『クロノクルセイド』新装版第1巻/森山大輔、少年画報社。 出典

表情の幅は、別の作品でも評価されている

森山大輔さんの表情について、太田垣康男さんは、2015年のヨコオタロウさんとの対談で、整った顔の人物にも多彩な表情を付ける力を評価しています。
その発言は『君死ニタマフ事ナカレ』についてのものですが、ロゼットの顔を見比べるときにも、顔の形がどこまで変わるかという見方が役立ちます。

まとめ

ロゼットの表情を追うと、騒がしい二人の掛け合いから、神像を気遣う会話への変化も読み取れます。
森山さんは、大きな口や頬の線で反応を見せる顔と、目線や小さな口元を見せる顔を、同じ二人の会話の中で描き分けています。
台詞の内容に加え、その台詞をどんな顔で言うかにも目を向けると、二人のやり取りをもう一度楽しめます。

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