藤田和日郎と井上敏樹はどう『からくりサーカス』を構成した?残す場面をめぐる共同作業

TVアニメ『からくりサーカス』Blu-ray BOX vol.2ジャケット/吉松孝博。©藤田和日郎・小学館/ツインエンジン。 漫画家・作者
TVアニメ『からくりサーカス』Blu-ray BOX vol.2ジャケット/吉松孝博。©藤田和日郎・小学館/ツインエンジン。

アニメ『からくりサーカス』の構成では、藤田和日郎さんが話を削り、井上敏樹さんが残す場面を提案するやり取りがありました。
長い原作を短くする作業の中で、二人は、人物の成長や関係が伝わる場面も相談していたのです。

その具体例が、第5幕の学校の場面です。
最初のアニメ構成案にはありませんでしたが、井上さんの助言で加わったと、制作側が説明しています。

藤田が削った案に、井上が残す話を提案した

藤田さんは2019年の本人取材で、まず、自分が絶対に外せない場面以外を大きく削ったと振り返っています。
すると井上さんから、ここは残した方がよいという意見が出たそうです。

藤田さんの案をそのまま使ったのではなく、井上さんが必要だと思う場面を提案するやり取りがありました。
藤田さんは、最初はゆっくり進め、その後は緩急をつけるイメージで構成したと話しています。

藤田和日郎/2019年の本人取材。撮影:相澤宏諒。
藤田和日郎/2019年の本人取材。撮影:相澤宏諒。 出典

全36話で結末まで届けるという方針の中にも、どこで人物をじっくり見せ、どこから先を速く進めるか、調整の余地がありました。
場面の取捨選択と、物語の進む速さを合わせて考えていたことが、藤田さんの回想から分かります。

残したい12の場面を共有した

藤田さんは、井上さんに、絶対に落としたくない12箇所のエピソードを共有したと話しています。
取材で挙げたのは、フランシーヌ人形が赤ちゃんを抱く場面や、ルシールとの別れです。

藤田さんは、勝・鳴海・しろがねが大団円へたどり着くために、三人の成長や変化、歴史の秘密、最後の選択が必要だと説明しています。
その方針とともに、残したい具体的な場面も井上さんへ伝えていました。

『からくりサーカス』/藤田和日郎、小学館。勝としろがねの会話。
原作『からくりサーカス』/藤田和日郎、小学館。勝としろがねの会話。 出典

作品の終わりを目指す方針と、そこへ至るまでに外したくないエピソードを、原作者と脚本家が共有していたわけです。
藤田さんからは残したい場面を伝え、井上さんからも残す話を提案する。
構成には、二人の意見を持ち寄る過程がありました。

学校の場面が、当初案に加わった

和田翔太プロデューサーの取材では、藤田さんの構成案を、西村聡監督や井上さんと相談し、最終的な構成へまとめたと説明されています。
その際に井上さんの助言で加わったのが、第5幕で勝としろがねが学校へ通う話でした。

公式の第5幕紹介では、鳴海が消息不明になった後、勝は、鳴海に教わった通り強く生きようと決意し、学校生活へ戻ります。
しろがねは勝を見守るため、勝の通う小学校の隣にある高校へ編入します。

和田さんは、この場面によって、成長した勝と、保護者のようなしろがねを見せることができ、展開にもメリハリがついたと説明しています。
長い原作から話を減らしていく構成の中で、二人のその後を見せる場面を加える提案もあったのです。

井上が語った、世界観を保つテレビ向けの構成

井上さんは公式コメントで、藤田さんの世界観を損なわずに、テレビ向けにアレンジした点へ注目してほしいと述べています。
原作の持つ、人間の美しさと醜さを描き、最後に人間を肯定するところに魅力を感じていたそうです。

TVアニメ『からくりサーカス』Blu-ray BOX vol.2ジャケット/吉松孝博。©藤田和日郎・小学館/ツインエンジン。
TVアニメ『からくりサーカス』Blu-ray BOX vol.2ジャケット/吉松孝博。©藤田和日郎・小学館/ツインエンジン。 出典

公式スタッフ表では、藤田さんと井上さんがシリーズ構成を担当しています。
原作者が残したい場面を示し、脚本家が別の場面を提案し、監督も加わって構成を固める。
その相談を経て、原作をテレビの物語として組み直していったのです。

まとめ

学校の場面を加えた判断には、原作を短くまとめる際にも、人物の成長や関係を見せる時間を大切にしたことが表れています。
藤田さんが外したくない場面を伝え、井上さんが別の場面を提案する。
二人の共同作業は、削る箇所を決めるだけでなく、『からくりサーカス』の人物をアニメでも伝えるための相談だったのです。

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