『からくりサーカス』の伏線は最初から決まっていた?藤田和日郎が語った連載中の苦労

『からくりサーカス』第1巻/藤田和日郎、小学館。 漫画家・作者
『からくりサーカス』第1巻/藤田和日郎、小学館。

藤田和日郎さんは、『からくりサーカス』のすべての伏線の答えを、最初から用意していたわけではありません。
作品を大きく広げた後、離れた話をつなぐために、連載中も考え続けていました。

読み終えた時には一つにつながる物語も、描いている時の藤田さんには、先が見通せないものだったといいます。

『うしおととら』の成功が、次の長編への自信になった

藤田さんは2019年の本人インタビューで、『うしおととら』を描き終えた直後には、どんな壮大な話でもまとめられると思っていたと振り返っています。
その自信のまま、『からくりサーカス』でも話を広げていきました。

しかし、藤田さんは第1巻を描き終える頃から、物語をまとめることに途方に暮れていたと話しています。
壮大な物語を畳めると思っていた作者が、新しい長編では、その難しさに直面したのです。

藤田和日郎/2019年の本人取材に掲載された写真。
藤田和日郎/2019年の本人取材に掲載された写真。 出典

『からくりサーカス』には、恋愛や映画、人形から生まれた着想がありました。
その描きたいものを長い物語としてつないでいく仕事は、連載の中でも続いていました。

広げた話を、連載中につなぎ合わせた

藤田さんは別の2019年の取材で、物語の要素を歯車に例えています。
先に置いた歯車同士が遠く離れ、その間を埋めるものを新しく考えなければならなかったという説明です。

藤田さんは、既に描いた要素に合う話を考え、合わなければ、さらに別の話を考えていました。
日本、フランス、アメリカ、中国などへ舞台が広がったことも、そうしてつながりを作ろうとした結果だったと述べています。

『からくりサーカス』/藤田和日郎、小学館。本人対談の公開抜粋。
『からくりサーカス』/藤田和日郎、小学館。本人対談の公開抜粋。 出典

しろがねと勝が出会った理由についても、藤田さんは、思いついてよかったと振り返っています。
話がうまくつながった時の感覚は、狙いどおりだという満足より、間に合ってよかったという安堵だったそうです。

藤田さんは、離れた要素をつなぐために新しい話を考える作業が、『からくりサーカス』の物語そのものだったのかもしれないと振り返っています。

休みの時間にも、物語の答えを探していた

田中圭一さんとの対談では、藤田さんは、休みの時間も物語の辻褄を合わせる作業に使っていたと話します。
自分で描いて悩み、その話をどうつなぐか、考えていたのです。

藤田和日郎/田中圭一との本人対談に掲載された写真。
藤田和日郎/田中圭一との本人対談に掲載された写真。 出典

藤田さんは、『からくりサーカス』の結論には、途中で何度も考えた末にたどり着いたと説明しています。
9年間考え尽くしたので、あの結末に自信があるといいます。
結末を探して悩んだ連載中の姿と、描き切った後の自信が、藤田さんの回想には並んでいます。

物語の行き先を、初めは示しにくかった

田中さんとの対談では、藤田さんは『からくりサーカス』の初期に、どうすれば登場人物たちが幸せな結末を迎えられるか、読者に示せなかったと話しています。
行き先の分かりにくさを、自分の弱点として捉えていました。

藤田さんには、物語を最後まで仕上げる意志がありました。
その上で、今の状況をどうすれば面白く描けるか、どうすれば結末へ運べるか、答えを探していたと説明しています。

『からくりサーカス』/藤田和日郎、小学館。勝としろがねの会話。
『からくりサーカス』/藤田和日郎、小学館。勝としろがねの会話。 出典

2025年の本人取材でも、藤田さんは、作品の裏でどれほど考えたかを読者に理解してもらいたいわけではないと語っています。
作品が面白く、読者の心に残ることを望んでいました。
構成の苦労を説明する時にも、藤田さんが最後に重視するのは、読者に渡す漫画の面白さなのです。

まとめ

藤田さんは、物語に行き詰まっても、考え抜けば何かを思いつくという自信がついたと話しています。
また、描き切れたという自信が、漫画家を支えると考えています。
『からくりサーカス』は、物語を完成させる過程が、藤田さん自身の創作への自信を育てた長編でもあったのです。

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