『幽遊白書』武威はなぜ、飛影への敗北で戦う望みを失ったのか

巨大な斧と重い鎧を身につけて決勝に臨む武威 幽☆遊☆白書
冨樫義博『幽☆遊☆白書』11巻/集英社

飛影に敗れた武威は、とどめを刺すよう求める。
武威には、かつて戸愚呂に敗れても、強くなろうと努力を続けた過去がある。
戸愚呂への敗北は再戦を目指す修行につながり、飛影への敗北は、生きる意味を失うほどの絶望につながった。
二つの敗北を分けるのは、武威が「これからの自分」に何を期待できたかである。

鍛えた力を信じていた武威

決勝に現れた武威は、巨大な斧と重い鎧を身につけている。
鎧を着ているのは、相手の攻撃から身を守るためではなく、自分の強大な力を抑えるためだ。
戸愚呂に負けた後も修行を続けた武威は、自分でも抑えきれないほどの力を持つに至っていた。

巨大な斧と重い鎧を身につけて決勝に臨む武威
冨樫義博『幽☆遊☆白書』11巻/集英社

飛影に斧を溶かされると、武威は鎧を脱ぐ。
斧が通用しなくても、まだ抑えている力がある。
武威はその力を解放して戦おうとする。
負けを知っている武威にも、鍛えた自分の強さを信じる気持ちが残っている。

勝ったと思った直後に、さらに強い飛影が現れる

鎧を脱いだ武威は、武装闘気をまとって空中に浮き、飛影にも本気を出すよう促す。
蔵馬が驚くほどの闘気を見せながら、いい思い出にしてやると挑発する姿には、自信がある。

武装闘気で空中に浮く武威と、驚く蔵馬、飛影を挑発する武威の表情
冨樫義博『幽☆遊☆白書』11巻/集英社

飛影も、右腕の力を抑える包帯を解く。

右腕の包帯を解き、黒龍波を放つ構えを見せる飛影
冨樫義博『幽☆遊☆白書』11巻/集英社

その飛影を前に、武威は勝つための手順を考えていた。
炎殺黒龍波を跳ね返せば、黒龍が飛影自身を焼くと考えていたのだ。
そして実際に、武威は押し寄せる黒龍波を跳ね返す。
黒龍が飛影をのみ込んだとき、武威は声を上げて喜んだ。

その喜びの直後、飛影は無傷で現れる。
黒龍の力を吸収し、自分の妖力をさらに高めていたのだ。
武威が最強の技を破ったと思ったところから、飛影の本当の強さが現れる。
武威は攻撃を重ねても動じない飛影に、完敗する。
自分の力で勝てたと思った直後に、なお大きな差を突きつけられたのだ。

「次は勝つ」と思えなくなった敗北

敗れた武威は、戸愚呂との力の差を話した後、飛影にも完全に負けたと続ける。
そして「もはや生きる意味もない」と告げる。
この言葉には、二つの敗北の間に続けてきた努力がある。

戸愚呂に負けた直後は、まだ強くなる可能性があり、再戦を目標に修行を続けられた。
今の武威は、自分では限界まで強くなったと語る。
その間に戸愚呂も強くなり、力の差は逆に開いていた。
そこへ飛影にも完全に負けたことが重なる。
もう一度努力すれば今度こそ勝てる、という期待を失ったのだ。

もっと強くなることが、本当に不可能だと決まったわけではない。
ここで語られているのは、強くなることに望みを託してきた武威自身の諦めである。
飛影はとどめを刺すよう求められても応じず、試合を終える。
その後、武威が再び立ち上がれたかは描かれない。

武威が失ったのは、今回の勝利だけでなく、再び勝つ日を目指して戦い続ける望みだった。

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