和月伸宏さんは『るろうに剣心』を作るとき、剣心という人物より先に舞台の時代を考えました。
歴史ものの読切が好評で、担当編集者から次も歴史ものを描こうと提案されたことが出発点です。
戦国、江戸、幕末を検討し、連載として描きやすく、人物を魅力的に見せられる舞台を探した結果、侍の時代が終わる頃の明治を選びました。
出発点は戦国時代の読切『戦国の三日月』
和月さんは『るろうに剣心』より前に、戦国時代を舞台にした読切『戦国の三日月』を描いています。
ジャンプSQ.の本人対談では、当時の少年漫画では歴史ものは難しいと見られていたものの、この読切の読者アンケートが良かったと振り返りました。
担当編集者から「もう一本、歴史ものを描いてみないか」と勧められ、次の作品も時代劇にする話が進みます。
『戦国の三日月』は、のちに『るろうに剣心』第6巻へ収録されました。
この読切への反応が、次も歴史ものを描くきっかけになりました。

戦国・江戸・幕末をそのまま選ばなかった理由
ただ、読切で扱った戦国時代をそのまま連載の舞台にはしませんでした。
和月さんは戦国時代を長く描くのは大変だと感じ、別の時代を探したと2016年の本人取材で話しています。
次に江戸時代も考えましたが、和月さんには、ちょんまげ姿の人物を格好よく見せられる気がしませんでした。
幕末なら髪形の問題は避けられても、今度は政治や各藩の関係を物語で扱う必要があります。
和月さんはその複雑さも気にかけ、侍の時代が終わる西南戦争の頃ならどうかと考えました。
こうして明治が選ばれた理由には、歴史上の出来事だけでなく、週刊の少年漫画として物語と人物をどう描くかという判断もありました。
明治という舞台を決めてから、剣心が生まれた
和月さんはジャンプSQ.の対談で、最初は剣心という人物もおらず、舞台設定から考えたと明言しています。
明治を選んだ後、その時代に置く「殺さない剣客」を考え始めました。
時代を先に決めたため、主人公の年齢にも調整が必要になりました。
和月さんが剣心の年齢を逆算すると当初は30歳になりましたが、担当編集者から少年漫画の主人公として20代にしてほしいと言われ、20代の設定にしたそうです。
第1巻の作中でも、剣心の年齢は薫とのやり取りになっています。

後に和月さんは、幕末に人を斬った剣心が、自分たちの作った明治では人を守るために刀を振るう物語だと2016年の原作者メッセージで説明しています。
最初は連載の舞台を探すための選択でしたが、完成した作品では、明治は剣心が生き直す時代にもなりました。
まとめ
明治という舞台は、好評だった戦国の読切から歴史ものの連載へ進み、戦国・江戸・幕末を検討して選ばれました。
和月さんは、連載の長さ、人物の見た目、政治の複雑さを考え、侍の時代が終わる頃に剣心を置いたのです。
そうして決まった明治を舞台に、かつて人を斬った剣客が新しい世でどう生きるかを描く物語が生まれました。


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