楳図かずおさんは、ホラーとギャグには、現実ではあり得ないことを描くという共通点があると話しています。
怖がらせる『神の左手悪魔の右手』と、笑わせる『まことちゃん』。
読者に起こしたい反応は違っても、常識から飛び出す話を作ることは、両方の仕事につながっていました。
ホラーにもギャグにも、現実にはない出来事がある
楳図さんは2022年3月のインタビューで、ホラーとギャグは紙一重で、怖いか笑えるかの違いはあっても、「あり得ない」ことは共通していると語りました。
自分の作品に子どもを登場させることも、この話につながっています。
大人の登場人物だけでは常識に縛られやすく、ばかばかしい方向へ話を進めにくい、と考えていたのです。
楳図さんは、戦争や恋愛なども、そのまま扱うより、頭に「変な」が付く形で取り入れてきたと話しています。
誰もが知っている題材を使う時にも、どこかに現実から外れるところを作る。
その発想が、恐怖と笑いの共通点でした。

まことの顔が、驚く出来事を呼び込む
『まことちゃん』の顔について、楳図さんは2009年のインタビューで、いつも驚いた顔にしていると説明しました。
子どもは何を見ても驚く、という楳図さんのイメージから、大きく見開いた目を描いています。
すると話を考える時にも、まことがびっくりするのはどんなことだろう、と考えるようになったそうです。
驚く場面を考えてから顔を描くだけでなく、先に決めた顔が、次の出来事を考える手がかりにもなっていました。
楳図さんは、まことの眉を描かないことについても、まだ人格が固まらず、何をするか分からない人物として説明しています。
グワシは、場面を盛り上げて区切るポーズ
手の形にも、読む時の勢いを作る役割がありました。
映画『マザー』で楳図さんを演じた片岡愛之助さんは、2014年の二人の対談で、グワシやサバラのポーズは、歌舞伎の見得にも通じると話しています。

楳図さんは、決めポーズには、場面の盛り上がりと一区切りを読者へはっきり伝える意味があると答えました。
動き続けるだけでは間延びするため、ダンスでもポーズを決めることが大切だと説明しています。
大きな目でまことの驚きを見せ、手のポーズで見せ場を作る。
『まことちゃん』の派手な顔や身振りには、話を運ぶための考えもありました。
恐怖漫画での顔や文字、コマの組み合わせは、楳図さんの絶叫表現でも紹介しています。
まとめ
酒井順子さんは、楳図さんとの対談で、恐怖漫画も『まことちゃん』も、人間の根源的な感情を刺激すると話しました。
怖がらせる話と笑わせる話で、反応は違っても、人の感情を大きく動かす面白さがある。
楳図さんが語った恐怖とギャグの共通点を、読む側からも捉えられる言葉です。



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