楳図かずおさんの漫画の絶叫は、文字と一緒に、開ききった口や目、顔のしわ、周囲へ走る線が飛び込んできます。
短い叫び声に、怖がっている人の表情と、続けて読むコマの勢いが重なる表現です。

叫ぶ顔と吹き出しを、一緒に見せる
『神の左手悪魔の右手』では、驚いた顔のすぐそばに、先端のとがった吹き出しが置かれています。
大きく開いた口、見開いた目、顔のまわりに広がる線が、叫びの文字と同じコマに入っています。

文字で叫び声を表し、目や眉、頬の線でも驚きを伝えています。
顔から放射する線と、吹き出しのとがった輪郭まで重なり、叫びの激しさが目にも伝わってきます。
叫ぶ顔を、次のコマでも見せる
別の見開きでは、少年が叫び、次のコマでは別の人物の口も開きます。
驚いた顔を繰り返しながら、見る向きや、顔を描く大きさが変わっていきます。

読者は一つの叫びを読んだ後も、次のコマでまた叫ぶ顔に出会います。
声を何度も書くことと、表情を何度も見せることが組み合わさり、動揺が一度の驚きで終わらないページになっています。

大きな口は、描くときのバランスも変える
2002年の金沢美術工芸大学での講演では、『まことちゃん』の模写が難しい理由も話題になりました。
楳図さんは、まことの表情が極端なことを挙げ、大口を開くと顔のバランスが崩れやすいと説明しています。

楳図さん自身も、まことの口を閉じさせようとすると、顔の中に空白が多くできて戸惑うそうです。
これは笑わせる漫画についての話ですが、口の開き方で顔全体が変わることを、描き手自身の言葉から知ることができます。
恐怖を感じさせる題材そのものについては、楳図さんの恐怖表現の広がりでも紹介しています。
人物の顔や影を生かした怖さは、『ウルトラマン』を描いた仕事にも見られます。
まとめ
楳図さんの絶叫では、声を表す文字を読みながら、怖がる顔も何度も見ることになります。
「ギャーッ」という短い言葉が、線と表情、コマの連なりによって、すぐには通り過ぎられない迫力を持つのです。


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