赤木しげるの通夜で、浅井銀次は赤木の決意を引き止めようとはしない。
死ぬと決めて死ねる赤木を、銀次は羨ましいとさえいう。
ところが、その銀次が赤木に、これから死ぬことは恐ろしくないのかと問いかける。
この質問には、銀次自身の不安が重なっている。
銀次も癌を患い、自分の死が近づいていることを知っていた。

赤木への質問が、銀次自身の恐れにつながる
銀次は、赤木が死を前にしてどんな気持ちでいるのかを聞く。
その後、銀次は自分が死ぬことを恐れていると明かす。
これで終わりだと思うと怖いという銀次に、赤木は答えていく。
この会話は、死を決めた赤木の気持ちを確認するだけでは終わらない。
赤木の通夜を訪れた銀次が、今度は赤木から言葉を受け取る側になっている。
銀次の質問に対し、赤木はまず、死んで全てが消える場合と、魂や意識のようなものが残る場合を考える。
前者なら、心配をする自分も残らない。
後者なら、体の痛みや煩わしさから離れたものだろうと赤木は考える。
どちらであっても心配しなくていいというのが、赤木の返事だ。

赤木の説明は、仮定を重ねた本人の死の捉え方である。
銀次が見えない先を恐れるのに対し、赤木はその先を別の見方で捉えようとする。
銀次の不安に、赤木は自分の考えを伝えている。
赤木は、先に逝く者として銀次に声をかける
赤木は銀次に、自分が先に死んでみせると告げる。
そして、自分が見てきた限りでは、人は温かく死んでいけると語る。
今夜人生を終えようとしている赤木が、死を怖がる銀次へ向けて伝える言葉である。

銀次は、赤木に恐怖を感じないのかと尋ね、自分の怖さも隠さず話した。
赤木はその銀次に、自分なりの考えを伝えたうえで、銀次にも受け入れられると声をかける。
同じように自分の死と向き合っている赤木が、銀次本人に語りかけたところに、この会話の重みがある。

金光や鷲尾が赤木の死を前に自分の願いを伝えたのに対し、銀次は自分も抱えている恐れを赤木に話す。
赤木との別れに来た銀次が、その赤木に支えられる。
通夜が生きているうちに言葉を交わす場だったことは、赤木が生前葬を開いた理由にもつながっている。
銀次との対話では、その時間が、銀次自身の不安を赤木に話せる時間になったのだ。


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