『天』金光と鷲尾はなぜ意見が違ったのか――赤木の意思と、友人の願い

死んでほしくないと赤木への思いを語る鷲尾 天 天和通りの快男児
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第16巻。

赤木しげるの通夜で、鷲尾は金光の方針に反発する。
金光の方針は、赤木本人が決めたこととして、その意思を尊重するというものだ。
鷲尾も、それが一見筋の通った考えだとは認めている。
だが、友人が死のうとしている時に、鷲尾はその理屈だけで見送ることができない。

死んでほしくないと赤木への思いを語る鷲尾
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第16巻。

鷲尾は、自分の意思も退けられない

鷲尾は、赤木の意思より自分の意思を尊重し、殴りつけてでも止めたいと語る。
この言葉は、赤木との面会でのやり取りではなく、金光に向けたものだ。
鷲尾がここで伝えているのは、赤木の考えを間違いだと証明する理論ではない。
赤木に生きていてほしいという、鷲尾自身の願いである。

赤木が納得しているからといって、友人の鷲尾まで納得できるとは限らない。
鷲尾にとって、赤木の死は本人だけの問題では済まないのだ。
赤木の意思を尊重するという説明では、自分がその友を失いたくない気持ちを置き去りにしてしまう。
だから鷲尾は、鷲尾自身の意思をはっきり口にする。

金光も、引き返す道は閉ざしていない

一方の金光も、赤木が一度決めた以上は死ぬしかないと考えているわけではない。
金光は赤木に、他の仲間の説得でやめようと思ったら、恥ずかしがらずに引き返してほしいと頼んでいる。
金光が尊重しようとする意思には、赤木がこの後に気持ちを変える可能性も含まれる。
その約束のやり取りは、赤木が生前葬を開いた理由でも詳しく読んでいる。

迷いが生まれたら引き返すと金光に約束する赤木
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第16巻。

金光は、赤木が決意を変えた時に、意地に縛られず引き返せるようにする。
鷲尾は、赤木の決意を聞いたうえで、自分には見送れないと意思を示す。
二人の違いは、友人を思う気持ちがあるかないかではない。
赤木の選択をどこまで受け入れるか、そして、自分の願いをどう伝えるかの違いなのである。

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