『天』赤木はなぜひろゆきの自己犠牲を止めたのか――裏ドラを崩す前の忠告

自分が退場して赤木を残そうと考えるひろゆき 天 天和通りの快男児
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第10巻・第84話。

ひろゆきは、自分が敗退してでも赤木を残そうとした。
原田の罠にかかって赤木から和了り、裏ドラが乗れば赤木を飛ばしてしまう。
ひろゆきが考えたのは、山を崩して裏ドラを確認できなくすることだった。
自分が罰を受ける覚悟もあった。

赤木は、その行動を止める。
仲間を救うために自分を差し出すことが、なぜ責任を取ることにならないのか。
赤木の言葉は、ひろゆきがすでにしたことと、これから消そうとしたものを分けると分かりやすい。

自分が退場して赤木を残そうと考えるひろゆき
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第10巻・第84話。

赤木を救うロンが、赤木を危険にさらした

原田はドラをポンし、満貫を和了れば赤木を飛ばせる状況にいた。
赤木が四索を切ると、原田は手牌を倒そうとする。
ひろゆきは原田の和了を止めるため、自分が先に和了を取る頭ハネに出た。
味方の赤木から和了るのは、原田の満貫を避けるためだった。

だが、原田の動きは空モーションだった。
原田の和了牌はすでに赤木の槓で封じられており、原田は四索では和了れない。
原田はひろゆきの待ちを読み、赤木を救おうとするひろゆきにロンを言わせたのである。

原田の空モーションに反応して和了ったひろゆき
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第10巻・第84話。

ひろゆきの手はリーチ、タンヤオ、平和。
裏ドラが乗らなければ満貫に届かず、赤木は残れる。
ところが、裏ドラが乗れば、ひろゆきの和了が赤木を飛ばしてしまう。
赤木自身の槓によって裏ドラ表示牌は二枚に増えていた。
原田の罠を止めたつもりのロンが、別の形で赤木を危険にさらしていたのだ。

自分が退場しても、ロンの宣言は消えない

ひろゆきは、山を崩して裏ドラの確認を不可能にすれば赤木を守れると考える。
自分は反則で敗退するかもしれない。
それでも、赤木が消えるより東軍にはよいと判断した。

この時点では、裏ドラが乗るかどうかはまだ分かっていない。
一方、ひろゆきがロンを宣言し、手牌を倒したことは、すでに起きている。
裏ドラの確認は、その和了の点数を確かめる手続きだ。
山を崩す行為は、自分のロンがどんな結果になるか分からないようにする。

山に手を伸ばすひろゆきに赤木が小声で忠告する場面
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第10巻・第84話。

赤木が短く告げたのは「礼を逸したことはするなよ」という言葉だった。
ひろゆきは山を崩さず、二枚の裏ドラ表示牌をめくる。
裏ドラは乗らず、赤木は生き残った。
赤木の忠告に従ったひろゆきは、赤木が敗退する可能性も残したまま、自分が和了った手の点数を確認したのである。

裏ドラが乗らず安堵するひろゆき
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第10巻・第84話。

赤木への礼と、勝負への礼

勝負の後、ひろゆきは赤木への無礼を心配する。
赤木を軽んじたから自分が代わりに退場しようとしたのではない、と弁解しようとするのだ。
ひろゆきはミスをした自分が退場すればよいと考え、赤木の忠告も、自分と赤木のどちらが残るかという問題として受け取っていた。

赤木に礼を逸するなと言われた意味を考えるひろゆき
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第10巻・第84話。

赤木の忠告は、赤木本人への態度についてではなかった。
赤木が問題にしたのは、卓の打ち手たちが積み重ねてきた勝負を壊すことだった。
原田が汚い空モーションを使ったことも、ひろゆきが自分の身を差し出すことも、宣言したロンの結果を確認しなくてよい理由にはならない。
赤木は、自分が罰を受ければどんな違反も許される、という考え方を退ける。

ひろゆきは、自分が退場すれば赤木を残せると考えていた。
赤木は、ひろゆきが罰を受ける覚悟よりも、和了の点数を確かめる前に勝負を壊そうとする行動を問題にした。
ひろゆきが代わりに退場しても、宣言したロンの点数を確かめたことにはならない。

赤木を残したいという願いから始まった自己犠牲の案には、赤木から和了った後の確認を止める、というもう一つの行為が含まれていた。
赤木がひろゆきに求めた責任の取り方は、その確認を最後まで済ませることだった。
ひろゆきに裏ドラをめくらせた赤木は、自分が助かるかどうかも、その和了の結果に委ねている。

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