音遠は、紅麗のために自分の命を賭ける。
裏武闘殺陣では相打ちを図り、傷ついた紅麗を救った後は、自分が痩せ細るまで看病した。
そこには、確かに自分を犠牲にする献身がある。
だが、音遠には、紅麗と二人で平穏に暮らしたいという願いもあった。
紅麗のために死ぬ覚悟と、紅麗と生きたい気持ち。
両方を持っている音遠が、最後には自分から戦場へ戻る。
その選択まで読むと、忠義は命を捧げる一言だけでは説明できなくなる。

紅麗を守るために、自分を削る
音遠は、磁生、雷覇とともに、紅麗のために生き、死ぬことを血判で誓っている。
紅麗への思いは、戦場で突然生まれたものではない。
紅の惨劇を見た音遠は、紅麗のために戦う道へ進んだ。
裏武闘殺陣で烈火と水鏡に追い詰められると、音遠は不狂和音の葬送曲で、会場ごと吹き飛ばそうとする。
烈火は、紅麗を思う音遠の気持ちを知り、攻撃をためらう。
水鏡が不狂和音を破壊し、その氷柱から烈火が円の結界で音遠を救った。
音遠は相打ちを望んだが、その場では死ななかった。
大会後、森光蘭に殺されかけた紅麗を、音遠は救い出す。
身を隠して看病し、わずかな食料のほとんどを紅麗へ与える。
自分の体が衰弱しても、紅麗を生かすことを優先した。
命を賭ける覚悟は、技の名を叫ぶ瞬間だけでなく、看病を続ける日々にも表れている。
音遠が望んだのは、二人で戦いから離れることだった
看病する音遠は、紅麗に、二人で誰も知らない土地へ逃げようと提案する。
紅麗には平穏に生きてほしい。
音遠自身も、その生活を一緒に送りたかった。
献身する音遠には、自分の望む未来もあったのだ。
しかし、そこへ鉞が現れ、二人は再び襲われる。
紅麗は鉞を倒し、気を失った音遠を診療所に預けると、戦いへ戻っていった。
残した言葉は、「お前だけでも幸せになってくれ」だった。
紅麗は音遠を戦いから遠ざけようとする。
音遠は紅麗と二人で戦いから離れたかった。
どちらも音遠の幸福に関わる願いだが、二人が思い描く暮らしは同じではない。
音遠が涙を流す別れには、この食い違いがある。
「待っているだけ」を選ばなかった音遠
音遠は、紅麗の帰りを待ち続ける道を選ばなかった。
死んだ仲間・磁生の磁双刀を手に取り、紅麗の力になるためにSODOMへ向かう。
今度は、自分から戦いに加わろうとしている。

「まってるだけの女なんてまっぴらだよ」という言葉には、音遠自身の意思がある。
かつての仲間の刀を持ち、紅麗に仇なす幻獣朗と戦う。
看病していた音遠が、今度は紅麗を裏切った幻獣朗を倒すことで力になろうとする。
音遠は、風子に敗れた雷覇も励ます。
雷覇は、火影の子孫という出自だけで決まる人間ではない。
十神衆の雷覇として、これからも紅麗の力になれると伝える。
音遠の忠義は、自分一人が耐えることに閉じず、同じ誓いを持つ仲間も支えている。

音遠は紅麗のために自分を削りながら、二人で暮らすことも願い、自ら戦うことも選んだ。
その願いは、すべて叶うわけではない。
最後には、麗を解散して戦国へ戻る紅麗を、現代から見送る。

紅麗と生きたいという願いを持つ音遠が、看病も、戦うことも、自分の行動として選んでいる。
紅麗を大切にする気持ちには、命を投げ出す覚悟だけでなく、まだ自分にできることを探して動く力もあった。


コメント