『烈火の炎』小金井は、紅麗を慕いながらなぜ麗を離れたのか

鋼金暗器を手にした小金井薫 烈火の炎
『烈火の炎』安西信行/小学館。

小金井にとって紅麗は、自分を孤独から救ってくれた兄だった。
その紅麗のもとを離れ、小金井は柳を守る火影の仲間になる。
恩人への気持ちが消えたから寝返った、と考えると、この選択はうまくつながらない。
小金井が拒んだのは、紅麗との関係そのものではなく、柳を傷つける行いだった。

鋼金暗器を手にした小金井薫
安西信行『烈火の炎』小学館

兄の言葉を信じていたから、約束を破る姿に失望した

小金井は、捕らわれた柳を気にかけていた。
紅麗から柳には何もしないと言われ、その言葉を信じる。
だが、柳が傷つけられ、小金井の信頼は裏切られる。
紅麗が命じたことなら何でも受け入れる、という態度を、小金井はここでやめた。

この失望には、紅麗が以前、小金井に見せた優しさが関わっている。
身寄りのない小金井が自分の命を絶とうとした時、紅麗は止め、「兄弟となろうぞ」と呼びかけた。
小金井は、冷酷な首領としての紅麗しか知らない部下ではない。
自分を救ってくれた紅麗を知っているからこそ、柳への扱いにも納得できなかった。

火影に加わる時、小金井は柳を守ることを掲げる。
これは、紅麗への恨みを晴らすために、強い組織へ移ったという選択ではない。
兄が守らなかった柳を、自分は守る側に立つ。
小金井は、誰についていくかだけでなく、何をするかも自分で選び始めている。

離れた後も、昔の関係を簡単には切れなかった

麗を抜けた小金井にも、紅麗の本心を知りたい気持ちは残る。
柳を守るために紅麗側と戦うことと、紅麗を見捨てることは、小金井の中で同じではなかった。

元相棒の木蓮との対戦にも、過去の関係を切り捨て切れない小金井の一面が出る。
小金井は木蓮への情につけ込まれ、だまし討ちで敗れる。
木蓮はさらに小金井を取り込み、水鏡との戦いで人質にした。
小金井に残った情を、木蓮は自分の勝利のために利用する。

烈火への敵意を口にする木蓮
安西信行『烈火の炎』小学館

小金井の優しさは、木蓮のような相手には隙になる。
相手の気持ちを信じようとする姿勢が、戦いでは不利に働くこともあるのだ。

紅麗についても、小金井は本当の気持ちを知ることを諦めなかった。
火影の一員として戦う小金井には、柳を守る目的と、兄を理解したい願いがともに残る。

紅麗への思いが最後まで残ることは、戦国時代へ帰る紅麗に、小金井が同行した結末にも表れている。
ただし、その結末を理由に、麗を離れた判断まで取り消したわけではない。
柳を守るために火影として戦った日々も、小金井自身が選んだものだ。

麗の解散を告げる紅麗
安西信行『烈火の炎』小学館

小金井は、紅麗を慕う気持ちを保ちながら、紅麗の行いを拒むことができた。
好きな人のすることを、すべて正しいと受け入れる関係から、自分の判断を持つ関係へ進んでいる。
柳を守るための離脱は、兄への思いを失った場面ではなく、兄の言葉を信じてきた少年が、自分の守りたい相手を選んだ場面なのだ。

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