『烈火の炎』陽炎の不死はなぜ解けたのか――光界玉が消したもの

ルートAを進む陽炎の表情 烈火の炎
『烈火の炎』安西信行/小学館、第30巻。

陽炎の不死の呪いを解いたのは、螺閃の魔導具「光界玉」だった。
ただし、螺閃が考えた通りにすべてが進んだわけではない。
陽炎を救うために自分が消えるつもりだった螺閃は生き残り、光界玉だけが砕ける。
この結末は、光界玉が何を消せるのかと、螺閃が何を消そうとしたのかを分けると分かりやすい。

ルートAを進む陽炎の表情
『烈火の炎』安西信行/小学館、第30巻。

不死を「命」から切り離して消す

陽炎は、幼い烈火を時空流離で未来へ送り出した代償として、死ねない体になった。
烈火が成長した現代まで、陽炎は四百年を生きている。
息子に再会できても、その呪いが解けるわけではなかった。

光界玉の力は、相手を傷つけることとは違う。
虚空の説明では、光界玉は物の存在そのものを消し、記憶や病魔のように形のないものも対象にできる。
螺閃が選んだ対象は、陽炎本人ではなく、陽炎にかけられた不死の呪いだ。
陽炎を生かしたまま、死ねない体という状態を取り除こうとしたのである。

螺閃は救う代償として、自分が消えることを望んだ

光界玉で何かを消せば、使い手も、それに見合うものを奪われる。
螺閃はすでに声を失っており、鬼凜が心を読んで言葉を伝えている。
呪いを消す力があっても、螺閃が無傷で使える魔導具ではなかった。

陽炎の前に現れた螺閃
『烈火の炎』安西信行/小学館、第30巻。

螺閃には、自分の母親を消してしまった過去がある。
母を失った螺閃は、自分が消える場所と、その意味を求めていた。
一方、烈火は、ようやく出会えた母・陽炎の呪いを解こうとしている。
螺閃は烈火との戦いを経て、その願いをかなえることを、自分の消える理由に選んだ。

鬼凜が螺閃を紹介し、烈火との接触を思い返す陽炎
『烈火の炎』安西信行/小学館、第30巻。

螺閃は陽炎を救い、その大きな反作用で自分も消えるつもりだった。
鬼凜が止めようとするのは、陽炎の救済に反対だからではなく、螺閃を失いたくないからだ。
同じ解除を前にして、螺閃と鬼凜が望む結果は違っている。

光界玉が砕けても、解除は失敗していない

実際に光界玉を使うと、玉は砕け、螺閃は消えずに残った。
螺閃が覚悟していた反作用は起きなかった。

解除の結果を示すのは、その後の陽炎の傷だ。
以前なら回復した傷が治らなくなり、陽炎の体から不死の力が失われたことが分かる。
光界玉が砕けたことだけを見て失敗とするよりも、使った後の陽炎の体に起きた変化が答えになっている。

螺閃が求めたのは、陽炎の呪いの消滅と、自分自身の消滅だった。
起きたのは前者だけだ。
陽炎を救うための行為が、螺閃の死で終わらなかったところに、この場面の救いがある。

呪いが解けた陽炎には、傷つく体が戻る

陽炎の呪いが解けるのは第30巻で、天堂地獄との決着より前だ。
最終決戦後に魔導具などが失われる出来事とは、順序を分けて考える必要がある。
陽炎は、光界玉が使われた後に、不死の力がなくなった体で戦いに関わっている。

傷が治らなくなるのは、戦っている陽炎にとっては危険な変化だ。
それでも、陽炎を苦しめていたのは、いつまでも死ねないことだった。
呪いの解除は、さらに頑丈な体を手に入れる解決ではなく、普通に傷つく体へ戻る解決になる。

螺閃は、母を消してしまった光界玉を、烈火の母を助けるために使った。
その使い手まで失われずに済んだため、鬼凜も螺閃を失う結末を免れている。
陽炎の呪いを解く行為が、螺閃の望んだ死を超えて、二人を生かす結末になったのだ。

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