『幻魔大戦Rebirth』の原作調査|七月鏡一が読んだ全集と企画書

石森プロの制作対談に掲載された七月鏡一と早瀬マサトの二人の写真 七月鏡一
七月鏡一と早瀬マサト/石森プロ掲載の『幻魔大戦Rebirth』制作対談。

『幻魔大戦Rebirth』の脚本を担当した七月鏡一さんは、平井和正さんの『幻魔大戦』を読み返し、石ノ森章太郎さんの漫画もデジタル版の全集で確認していました。
さらに、石森プロに残っていた企画書や、読者から寄せられた指摘も、過去の構想を知る手がかりになっています。
制作が始まってからも、過去の構想を調べる仕事は続いていました。

石森プロの制作対談に掲載された七月鏡一と早瀬マサトの二人の写真
七月鏡一と早瀬マサト/石森プロ掲載の『幻魔大戦Rebirth』制作対談。 出典

小説と漫画、二人の『幻魔大戦』を読む

『幻魔大戦』は、平井さんと石ノ森さんが1967年に漫画として発表し、その後、小説などにも広がった作品です。
七月さんが脚本、早瀬マサトさんと石森プロが漫画を担当した『Rebirth』は、その作品群を引き継ぐ新作でした。

ベガと東丈、少女、背後の月が描かれた幻魔大戦Rebirth第1巻の表紙
『幻魔大戦Rebirth』第1巻/原作・平井和正、石ノ森章太郎、脚本・七月鏡一、漫画・早瀬マサト、石森プロ、小学館。 出典

石森プロの制作対談で、早瀬さんは、七月さんが制作開始にあたって平井さんの『幻魔大戦』を全部読み返したと語っています。
早瀬さん自身も石ノ森さんの作画アシスタントを務めた漫画家ですが、小説については七月さんの理解にはかなわないと話していました。
早瀬さんは、七月さんが平井さんならどう書くか、自分が石ノ森さんならどう描くかを考え、打ち合わせをしていたと、サンデーうぇぶりの作者コメントでも説明しています。

石ノ森作品を確かめる助けになったデジタル全集

七月さんにとって、石ノ森さんの漫画を広く確認する助けになったのが、石ノ森章太郎デジタル大全でした。
石ノ森さんの作品群を15シリーズに分けて電子版で提供する全集です。
七月さんは、紙の本を揃える大変さに触れ、デジタル版のおかげで確認しやすかったと振り返っています。

石ノ森章太郎デジタル大全の公式案内
石ノ森章太郎デジタル大全の公式案内/石森プロ・講談社。 出典

『Rebirth』には、『幻魔大戦』以外の石ノ森作品の人物も登場します。
七月さんは、昔の作品の人物を別の役柄で登場させることも試みました。
二人は、人物を登場させるタイミングについても相談しています。

企画書に残っていた、超能力で動かす巨人像

連載中には、出版された作品だけでは分からなかった構想も見つかりました。
石森プロに保管されていた、平井さんの原作原稿と企画設定書です。
そこには、1967年の企画で実現しなかった巨人像のアイデアがありました。

早瀬さんによると、巨人像の中は空洞で、超能力で動かす構想が書かれていました。
石ノ森さんが描いたラフも添えられていたそうです。
七月さんは、これを見て、『幻魔大戦』が巨大ロボットものになっていた可能性にも言及しています。

七月さんが当時のTwitterに巨人像のことを書くと、読者が『真幻魔大戦』にもそれらしい場面があると教えてくれました。
七月さんが見逃していた箇所でした。
七月さんは、初期のアイデアが後年の小説にも生きていたと分かり、嬉しかったと振り返っています。

この構想が見つかった時期は遅く、『Rebirth』には組み込めなかったと七月さんは説明しています。

昔の人物や場面から、新しい展開を作る

七月さんは、昔の作品の場面を再現することを、旧来のファンが入りやすい入口にしようと考えていました。
そのうえで、同じ場面が出てきても、その先は昔と同じ展開にはしない方針を語っています。
早瀬さんも、初めて読む人には新しい物語になり、旧作を知る人には予想が外れる仕掛けになると評価しました。

宇宙船の形にも、漫画と小説の両方が関わっています。
七月さんは、ベガの宇宙船の三角錐型が小説『真幻魔大戦』の描写によるものだと説明し、早瀬さんに石ノ森作品のようなデザインで描いてもらったと語りました。
早瀬さんも、『サイボーグ009』に登場したピラミッド状の宇宙船を参考にしたと話しています。

多数の宇宙船とピラミッド型の船が描かれた幻魔大戦Rebirthの見開き
『幻魔大戦Rebirth』のピラミッド状の宇宙船。対談で「サイボーグ009」の宇宙船のアレンジに言及した箇所の図版(※2)/平井和正・石ノ森章太郎、七月鏡一、早瀬マサト・石森プロ、小学館。 出典

第1巻は、月だった天体の破片で戦士ベガが目覚めるところから始まります。
昔の漫画が月の接近で終わったことを知っていれば、ここから何が続くのかも気になる入口です。

複数の登場人物と脚本七月鏡一・漫画早瀬マサトの名前が載った幻魔大戦Rebirth第11巻の表紙
『幻魔大戦Rebirth』第11巻/原作・平井和正、石ノ森章太郎、脚本・七月鏡一、漫画・早瀬マサト、石森プロ、小学館。 出典

まとめ

漫画と小説に分かれて広がった『幻魔大戦』を、新しい漫画へつなぐ。
七月さんの仕事には、刊行された作品の読み直しと、埋もれていた構想の発見がありました。
発見した巨人像の構想は新作に組み込めませんでしたが、後年の小説にもそのアイデアが残っていたと知ることはできました。
全11巻の制作を終えた七月さんは、こうした発見から、『幻魔大戦』にはさらに世界を広げられる可能性があると語っています。

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